「六幻、災厄招来!」

―界蟲「一幻」!!―
神田が六幻を振り抜くと共に、界蟲と呼ばれるこの世に在らざる生物がまるで意思を持っているかのようにレベル1のアクマを食い破る。
次から次へとアクマを破壊し、爆発音が闇夜に響いた。





土翁と空夜のアリア








創造書クリエイト項目コード:009 Flecha」

アクマの弾丸を避けながら、が本を開き項目を唱えるとページが勝手に開かれ、そこから弓が出現した。
矢は無いのだが、が弦を引くといつの間にか矢が番えられている。


っ」

矢を次々と放つと同時に、それは正確に目標ターゲットを射抜き爆発を引き起こす。
神田との連携もあり、浮遊していたアクマは瞬間にして殲滅された。


「あーっ!!?もう1匹いた!あ、あっちにもいる!2匹もいたっ!」

レベル2のアクマが興奮気味に言う。
爆発を見ても怯まないところをみると、どうやら仲間意識は余り無いらしい。


「おい。あのタリズマンの解除コードは何だ?」
「き…来てくれたのか…………エクソシス…ト」

先にアクマを倒し終えた神田が、虫の息で横たわるファインダーに気遣いの言葉もなく単刀直入に解除コードを聞き出していた。


「早く答えろ。部隊おまえたちの死をムダにしたくないのならな」
「神田っ」

最後の1匹を仕留めたが神田の側に降り立つと怒鳴る。
いくら神田の言い回しが不器用とはいえ、必死に戦ってくれた仲間に対して失礼だ。
しかしファインダーは気にした様子もなく、息も絶え絶えにゆっくりと口を開いた。


「は…Have a hope “希望を…持て…”だ!」

解除コードを呟いた後、ファインダーの男は息を引き取った。
すると神田はコードを聞くや否や、躊躇無く人形の元へ向かってしまう。
神田は任務中に追悼なんてするような人間ではない。
は神田を目で追ったが、一度ファインダーの真横にしゃがみ込むと十字を切って「有難う」と言葉を送った。
そしてすぐさま立ち上がり、同じくして人形の元へ向かう。

神田が解除コードを入力して結界を解くと、人形に手を差し出して「来い」と命じた。
は小さい女の子の方を任されると、既に建物の上に飛び移っている神田の後を追って飛び上がる。


「そっちは後で捕まえるからいいもん!」

アクマがこちらを見て言った。
神田も足を止めてそちらへ振り返り、もアレンを見つめる。


「助けないぜ。感情で動いたお前が悪いんだからな。ひとりで何とかしな」
「いいよ、置いてって」
「アレン…」
「イノセンスがとキミの元にあるなら安心です。僕はこのアクマを破壊してから行きます」

は物悲しそうにアレンの名前を呼ぶが、アレンはを見上げてにこっと笑って見せた。
その間にも、神田は既に背を向けていていつでも移動できる体勢になっている。


「行って、
「でも…」
「大丈夫。必ず後で追いつくから」
「……」

アレンを信用してない訳ではないが、やはりレベル2のアクマを相手に置いていくのも忍びない。
やはりここは神田にこの女の子を任せてアレンと戦うべきか。
しかし、今ここで神田の側を離れたりしたら、神田のみならずコムイにまでお咎めは受けるだろう。


「もたもたするな、
「っ、」

神田が指示語や代名詞以外で名前を呼ぶときは怒る寸前という意味だ。
が神田に目を向けると、「行くぞ」とばかりにねめつけられる。


「後で必ず会いましょう。約束しますから、
「‥‥‥絶対、だよ」
「はい」

アレンの返事を聞くと同時に、神田は痺れを切らしたのか先に移動を始めてしまった。
も慌てて羽を広げると最後にもう一度アレンを見る。
アレンは大丈夫と言うように頷いて見せると、ようやくは神田の後を追いかけた。









建物の間を神田が走り抜け、それに続いてが飛行する。
何処まで行けばいいのかは分からないが、今は神田について行った方が無難だ。


「(また小言言われたくないし…)」

が小さく溜め息をつくと、腕に抱えた少女がのコートをくん、と引っ張った。
腕の中を見下ろせば、女の子がこちらを見つめている。


「どうしたの?」
「あの男の子の事が心配なの?」
「んー…まぁね」

心配に決っている。
大事な仲間で、大事な弟弟子。そして大事な友達。
失いたくない、大切な人だ。


「あなたには、大切な人はいる?」
「え…?」

心の中を読まれたのかと思った。
しかし女の子にそんなような様子はなくて、首をかしげる。


「‥‥いるよ。たくさん。教団の皆とか、世界の人達。それから、あなたも」
「わたし、も?」

大きな目が、更に大きく見開かれた。
そんなに驚くようなことだろうか?
出会った瞬間から、交わった瞬間から、見知らぬ他人は知り合いになる。
知り合いになれば、大切な人となるまでにきっと時間は掛からないだろう。


「そう言えば名前聞いてなかったね。何ていうの?」
「‥‥‥ララ」
「ララ?綺麗な名前ね」
「あなたはって言うのね」
「何で知ってるの?」
「さっきの男の子が呼んでた…」
「そうだった」

が苦笑すると、ララも笑ってくれた。
なんだか戦場には似合わない、和やかな笑顔だ。


「それから‥‥外にいると危険だよ。地下通路に入ろう?」
「地下通路?」

先ほどまでの和やかな雰囲気は消え失せ、ララが真剣な面持ちで言う。
そんなものがあるだなんて資料には書かれていなかった。
地下通路がどんなものであるのかは分からないが、こうして無駄に動き回っているよりは確かに安全なのかもしれない。


「この町には強い日差しから逃れるための地下住居があるの。迷路みたいに入り組んでて、知らずに入ると迷うけれど、出口のひとつに谷を抜けて海岸線に出られるのがある」

本当に随分と詳しいんだな、とは思った。
こんなに小さな子なのに、まるで何十年もここで暮らしてきたかのような口振りだ。


「あのアクマという化け物は空を飛ぶ…地下に隠れた方がいいよ」
「だって神田。聞こえたでしょ?」
「…あぁ」

移動速度は速いが、これくらいの声量なら神田でも聞き取れているだろう。
が神田に声を掛けると、神田は返事を返して地面に降り立った。
もゆっくりと地面に着地すると、抱えていたララをそっと下ろしてやる。

神田が歩き出そうとしたその時、神田の首元からジリリリリン!と黒電話のようなコール音が聞こえてきた。
これは無線ゴーレムが通信をキャッチした時の音だ。


「トマか。そっちはどうなった?」
《別の廃屋から伺っておりましたが、先ほど激しい衝撃があってウォーカー殿の安否は不明です》

神田がゴーレムに問いかけると、ゴーレム越しにトマの声が聞こえた。
そして聞こえたその言葉に、は眉を寄せて苦しげな表情をする。
やはり一緒に残って戦うべきだった、と。
続けてゴーレムから聞こえてきたのはティムがアクマに襲われているということ。
が落ち込んだように俯いていると、元の大きさに戻ったリデルが慰めるようにの頭にとまった。


「わかった。今俺のゴーレムを案内役に向かわせるから、ティムだけ連れてこっちへ来い。長居は危険だ。今はティムキャンピーの特殊能力が必要だ」
《はい》

短い会話の後、通信が切れる。
その直後に神田のゴーレムは宙へ舞い上がるとトマがいるであろう方向へと飛び去っていく。
それを見送ったは、神田に歩み寄った。


「ねぇ、やっぱり私も行ったほうが」
「バカ言ってんじゃねぇよ。こっちは3人も面倒を抱えてるんだ。更に面倒を増やすな」
「でも…」
「それより今は地下通路だ」

の言葉をことごとく退け、神田はさっさとララ達の方へ行ってしまう。
もういっその事神田に黙って行ってしまおうかと思ったが、アレンは約束したのだ。

『後で必ず会いましょう。約束しますから、

きっとアレンは追いかけてきてくれると信じて、は神田の側へ歩み寄った。



  



ヒロインはあんまり進んで出てくる子じゃないですね…。
お陰様で原作に呑まれるようになってしまって影が薄い(扱い酷くてごめん)
オリジナルに入ればもうチョイなんとか…。

2008/11/07