白兎を追い求めてはまた薄暗い道を歩き始めた。
道すがら、不思議の国のアリスは最後どうなったんだろうかとエンディングを思い出そうとしている。


「確か夢オチのはずなんだけど…これって夢?」

夢にしては妙にリアルでメルヘンだな、と思った。





不思議の街のアリス








しばらく歩いていると森の終わりが見えてきた。
なんとその先に広がっているのは青い空と自分の背丈以上ある生垣。
壁のように連なるそれがずーっと真横に袖を広げていた。
進めば入り口くらいあるだろうとはとりあえず右に向かって歩き始める。
緑の生垣がしばらく続くと、足元に通り抜けられそうな穴が空いていた。


「いいよ、ね?」

不法侵入にはなるかもしれないが、出口を探す為でもある。
は屈んでその穴を通り抜けると葉っぱを叩き落して目の前に広がった景色を見やる。


「バラ園…?」

辺り一面に広がっていたのは、赤と白のバラの花だった。


「あれ、」

奥のバラの木の側に人がいるのが見えた。
しかもその姿には見覚えがある。
は「またか、」と思ってその人物達へと近寄って行った。


「こんにちは、リーバー班長。それからジョニーとタップも」
「おお、お疲れ」
「う、うん。お疲れ様…?」

本人ではないのだろうが、リアルすぎては顔が引き攣る。
バラの木の側には片手にペンキ缶と筆を持った科学班の3人がいた。
缶の中には赤いペンキが入っていてそれを必死に白いバラへと塗りたくっている。


「何、してるの?」
「いや、な。本当は赤いバラを植えるつもりだったんだが…手違いで白いバラを植えちまって。だから塗ってるんだ。赤く」
「そ、そう」

こちらには目をくれる事も無く黙々とペンキを塗っていく3人。
はその様子をしばらく眺めた後、ねぇ、と声を掛ける。


「アレン、見なかった?」
「ああ、白兎の事か?」
「うん」

既にアレンは白兎で固定らしい。
は頷いて答える。
リーバーは作業を中断すると少し考えたのち、「そうだな、」と一人頷く。


「白兎を追いかけるルールだからな」
「(また、ルール?)」

はぼんやりと考えた。
コムイにも神田にも言われた言葉だ。


「確かここを横切っていったから…城にでも行ったんじゃないか?女王に呼ばれてるんだろう」
「女王…?」

は“女王”という単語に反応した。
リーバーはまた一つ頷いて城の方向を指差す。


「ハートの城の女王だ」
「有難うリーバーさん、行ってみる」
「ああ」
「頑張ってね」
、お前もな」

手を振って別れると、は自然と駆け出していた。
ハートの女王。
彼女達から聞いた人物に間違いは無い。
街行く人を引き止めて聞いたが一切情報が出てこなかった人物。
それもそのはず。


「こんな所にいるんじゃ会う事だって出来やしないわ…」

迷路のような園を抜けると、目の前に大きな城が現れた。
その建物の直ぐ目の前に時計を持ったアレンが走っているのが見える。


「待って!アレン!!」

はアレンを追って城の中へと入っていった。









城の中に入ってきたは良かったものの、は目の前で繰り広げられている事態にどうしようかと迷っていた。

城の中は何やらざわざわと騒がしく、そこは法廷のようにも見える。
部屋の中ではトランプと思わしき兵隊が規則正しく並んでいた。
そして王座の位置には仮面ペルソナをつけた赤いドレスの女と、その直ぐ側にトランペットと羊皮紙を持ったアレンが立っている。
そして部屋の中央には、大きな黒い箱が置いてあった。


「(何が、始まるの…?)」

「白兎、合図を」
「はい、女王様」

アレンが女王に頭を下げて台の上に立った。
トランペットを軽快に吹き鳴らすと、壁際に居たトランプの兵士達が一歩前に出てくる。


「これより訴状を読み上げます」

アレンの声が部屋に響き、その後ゆっくりと羊皮紙を開いて訴状を読み上げる。


「被告人、
「(えっ!?)」

なんと、名前が上がったのは自分だった。
は隠れていた壁をグッと握り締める。


「彼のものは重大な犯罪を起こした。
一つ、男子禁制の地に男を招き入れた事。
一つ、白兎を追いかけてしまった事。
一つ、ハートの女王の機嫌を損ねた事。
以上により、被告人を起訴します」

はドキリとした。
そうだ。ルクセンブルクは男子禁制の街。
何故ばれたのかは分からないが、もしかしたらラビと神田の身に何かあったのかもしれない。
どうしよう、と思ったその直後、女王が「下がってよい」と平坦に述べる。


「被告人は重大な罪を犯した犯罪者。彼女には死よりも重い罰を与えるべきである」

そう言うと周りの兵士達がわっと声を上げた。
そうだ、そうだ、とはやし立てている。
女王は再び手で兵士達を制すると、王座から立ち上がる。


「けれどここに被告人はいない。よって、被告人が連れ込んだ男どもを―――処刑する」
「!!」

は出て行きそうになった体をなんとか壁の方へと押し戻した。
今出て行っては捕まえてくれと言っているようなものである。
もう少し様子を見ようとじっとしていると、女王が手を高く持ち上げた。
すると壁際にいた数人の兵士が中央へ歩いてきて、黒い箱を開ける。


「っ!」

中から出てきたのは縛り上げられている神田とラビの姿。
二人共気を失っているようである。
最初は帽子屋に居た2人かとも思ったが、あの服装は間違えなく逸れる前に見ていた本人達のものだ。
女王が王座に再び腰を下ろした。
口元を歪ませ弧を描くと。


「首を刎ねよ」

傍らの兵士が斧を構えた。



  



ようやくここまで来たかーって感じです。
けどアリスの話って本当面白いですよね。一応私の作品も、原作を引用させて頂いております。
キラキラ呟くヤマネや、白いバラにペンキ塗りたくってたり。凄い発想ですな。
そろそろアリス編、最大の難関に突入しますよー!

2009/03/04