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『兎に角。時計を持った白兎を絶対に追いかけない事!気をつけてね』 その言葉が耳元で繰り返されたが、の足は思わず駆け出していた。 人の波を押し分けて、森とは別方向へと走り出す。 絶対に追いかけることはないだろうと思っていたのだが、何故だろうか。 (追いかけなければならない。追いかけなくちゃいけない) 誰かが頭の中でそう呼びかけていた。 |
| 不思議の街のアリス |
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「すみません、すみませんっ…」 人を押しやってようやく反対側の路地に出た。 人通りの少ないというよりもまったく人が居ない路地は閑散としていたが、はそんな事は気にならなかった。 白兎は何処へ行ったかと、辺りをキョロキョロと見渡す。 「いた!」 思わず声を上げて追いかけてしまう。 足は自然と前へ前へと踏み出していて、心は何処かワクワクしている。 の前を走るのは確かに白兎だった。 二足歩行で飛び跳ねて、赤と黒のチェックベストを着ている。 そして極めつけは体と同じくらいの大きさの時計。 重そうなのに重さを感じさせないような足取りで兎は跳ねている。 「リデル」 は傍らを飛んでいたリデルを呼ぶと、走りながら口を開く。 「神田と、ラビに、伝えといて」 その言葉に頷くように大きく羽ばたくと、リデルは高く舞い上がってと別方向へ飛んでいく。 それを見送った後、は兎を見失わないように速度を上げた。 兎が角を曲がり、もそこを曲がる。 けれどの足は急に速度を落とし、ついに止まってしまった。 目の前には袋小路。 けれど追いかけていたはずの兎の姿は何処にもない。 辺りを見渡してみるが、石畳の地面に白いレンガ張りの壁があるだけだ。 「ん…?」 ふと、小路の奥、突き当たりに何かを発見した。 は警戒しつつもそれに近付いていく。 扉だった。 「ちっさ…」 扉は扉であっても、それはどう考えても人が通れるようなものではない。 いや、屈めば通れるかもしれないが、明らかに人間に向けて作られたようなものではない事は確かだ。 は近寄って扉を見つめる。 青い木でできた扉に、金の取っ手がついている。 上がアーチのように丸くなっているメルヘンな扉だ。 もしかしたら兎はこの中を通っていったのかもしれない。 は手を伸ばすと、そっとノブを回してみた。 「………」 中は真っ暗だった。 昼間だというのに、中には外の明かりさえ入り込む事はない。 頭を突っ込んで上下左右を見てみたがやはり何もない。 「どうしよ、」 ここまで来て諦めるというのは少し残念だった。 もしかしたらあの兎が今回の事件にも関わっている可能性もある。 戻るか、中に入るか。 は少し考えた後、もう一度頭を中に入れてゆっくりと前進し始めた。 屈んでいるため四つん這いで中に入る。 中に入ってみても、辺りはただ闇が広がっているばかりで何も見えてこない。 と、一歩前に手を出した瞬間だった。 「へっ…!?」 がくり、と手が空をきる。 空をきるというよりは、滑り落ちたというほうが正しいだろうか。 手はその先にある地面に触れるはずだったが、あるはずの地面がなかった。 つまり“穴”が空いていたという事で。 「うわ、わっ!?」 体は暗く深い闇へと飲み込まれるようにして落下していった。 ・ ・ ・ 「―――…いったい何処まで続いているのかしら、この穴」 は穴に落ちた。 落ちてからどれだけの時間が経過しているのかは分からないが、確実に10分以上は落ちている。 普通に考えて10分以上落下しているなんてありえない事だ。 空からスカイダイビングをするにしてもフリーフォールでさえこんなに時間はかからないだろう。 現に2分もすれば悲鳴は止まり、5分で空中でのバランスの取り方を覚え、そして今に至る。 スカートが捲れないように裾を押さえて、はただ落下していた。 「リデル置いてくるんじゃなかった…」 リデルがいれば宙でも自由自在に動けるため、もしかしたら今の状況も少しは変わったのではないだろうか。 はふう、と溜め息をついて下を覗き込む。 するとずーっと先の方に小さな灯りが見えてきた。 そろそろゴールなのだろうか。 そもそも、これだけ落ちたのだ。 もしかしたらこのままマグマに直撃なんて事もありえるかもしれない。 「ん…んん?」 見えてきたのは地面で、はこのまま直撃する!と身構えた。 ところが体は急に重力に反したかのように一瞬軽くなるとふわりと浮かんでちゃんと着地する事が出来た。 それでも宙に浮いていたのが長かったせいか、足から力が抜けてガクリと地面に崩れ落ちる。 ベシャ、と地面に転がるようにして横たわった。 「い、痛い…っ。てか…ここ何処?」 顔に掛かる髪の毛を退かしてはうつ伏せのまま少し体を起こす。 辿り着いたのはマグマでも、ましてや薄暗い地中でもなかった。 確かに頭上には暗い闇が続いているが、コンクリートとは違う地面に、周りは壁に覆われている。 「チェックの床にチェックの壁…感覚がおかしくなりそう」 降り立った地面にはピンクと黒で構成された市松模様、壁も同じ色なので変な感覚だ。 更に壁には一面時計が飾られていた。 大きなものから小さなものまで。 同じ形の時計は1つもなく、更には時間でさえも全てバラバラだ。 時計は不規則にチクタクと時間を刻み、その音が部屋いっぱいに響いている。 はうんざりしながらゆっくりと立ち上がってぐるりと部屋を見やった。 特別おかしなところはないが、目の前に伸びる一本道が気になる。 「行って、みるか」 ぐっと手を握り締めると、は歩き出した。 ← † → いよいよアリスとしての物語が動き始めたって感じですね。 ここではずっと保留にしていたある人物との接触があります。 ラビが気にしていた名前・・に関係が(もうお分かりですかね) そしてついに、ヒロインのイノセンスの本当の姿が・・(これはまた後ほど) 2009/03/03 |