「今回の任務はこの3人で行って欲しいんだ」

そのコムイの言葉に、神田、ラビ、はお互いの顔を見合わせた。





不思議の街のアリス








「おいコムイ」
「ちょ、コムイ!?」
「ねぇコムイさん…?」

「いやー仲良しさんだね☆」

同時にコムイを呼んだ3人は再び顔を見合わせる。
一人場違いにも「僕って人気者だなー」と浮かれているコムイを除いて、3人は並んでコムイに向き合った。


「どういう事か説明しやがれ」
「そうだぜコムイ!だいたい男子禁制っつーのに何でオレらが行くんだよ」
「そうだよコムイさん!」

ここに来て纏まりを見せられるのは流石の連携と言うべきか。
神田とラビの追及に同意したは隣に並んだ2人を改めて見直す。

2人はどう考えても男である。
天地がひっくり返らない限りはきっとそれは変わらない。
そして何より女の自分とはまるで体格が違う。
背も、肩幅も、手の大きさも。
悔しいながらとても均等の取れたボディバランスは正直男にしておくには勿体無いくらいであるが、女の自分と比べればその差は歴然。
疑う余地も無く男だ。


「だって考えてもみなよ神田くん、ラビ」
「は?」
「へ?」

名指しされた2人は間抜け顔でコムイに目を向ける。


「今この本部ホームにいる女性エクソシストはくんのみ。しかもファインダーからの通信が途絶えたせいでこちらが有している情報は殆ど無いに等しい。そんな場所へか弱いくん一人を向かわせられると思うかい?」
「……」
「それは…」

押し黙った2人を見てコムイは「後少しだ!」と陰でにたりと微笑む。
そんな中だけは何だか複雑な表情で突っ立っていた。
言い方は至極優しいものであったにせよ、結局は足手纏い扱いされているのではないかと思ってしまう。

(ああ、ネガティブだなぁ)


「と、言う訳で!」

いつの間にか話が進んでいたようだ。
が顔を上げると、コムイがこちらを見てニヤと笑った。
嫌な予感、と思っていると同時に、司令室にリーバーが現れる。


「リ、リーバー班長?」

リーバーは青白い顔で持っていたトランクを2つ床に下ろした。
が声を掛けると、びくっと肩を震わせる。


「べ、別に俺の趣味じゃないからな!?」
「は…?」

いったい何の言い訳なのか。
リーバーは切実そうな表情でに意味の良く分からない事を告げる。
首を傾げたの前にコムイが躍り出てくると、リーバーが今しがた持ってきたトランクを持ち上げる。


「はい、これはくんの分」
「は…はぁ…?」

差し出されたそれを受け取る。
もう一つのトランクと比べて二周りほど小さいトランク。
何が入っているものなのか、振ってみるが別に音はしない。


「ふふふ。いつかこういう日が来るんじゃないかと用意しておいたんだ♪」

嬉しそうに…というよりは、何かを企んで狂喜に打ち震えているような。
神田、ラビ、は悪寒にぞくりと背筋を震わせる。
しかし悪い予感というものは案外的中してしまうもので。
コムイが大きいほうのトランクに手を伸ばした。


「ジャーン!これは神田くんとラビの分だよ!」
「「っ!?」」

声にならない叫びというのはまさしくこれの事なんじゃないだろうか。
は愕然としてコムイが広げたトランクの中を見つめた。
ちらりと窺った神田とラビの表情はこれでもかという程に青褪めている。


「どうだいとっても可愛いだろう!?巷でも有名なブランドのお店に特注で頼んでおいたんだ!」

フフンと自慢げに言うコムイとは対象に、神田とラビは驚くというよりはこの世の終わりのような顔をしてそれを見つめていた。
トランクの中にあったのは黒と水色のワンピース。
しかもゴスロリと言われる部類のものだ。
派手なレースが目に痛いほど主張している。


「え…てかコムイさん、今これ神田とラビのって…」
「うん。言ったよ?」
「…あの、神田とラビは…男だけど」
「うん。知ってるよ?」

「っ!!ふざけんなコムイっ!!!!!」

当たり前の事を何で聞くの?というとぼけたようなコムイに、とうとう神田が掴みかかった。
「暴力はんたーい!!」と悲鳴を上げるコムイの胸倉を掴んだまま神田は凄む。


「テメェ…何が俺達の分だ。ふざけてんじゃねぇぞ!」
「だからふざけてないってば…く、苦しいよ神田くん…」
「あんなものどうしろってんだよ!」
「どうするも何も着る以外に用途はないよ」

神田の拘束から解放されたコムイは襟首を直しながらあっけらかんと言う。
今度は神田の手が腰元の六幻に掛かった。
これはマズイと判断したラビとが両脇から神田を抑える。


「どうどう神田!」
「落ち着くさユウ〜!」
「離せテメェら!叩っ斬る」

目が据わっている。
は神田を抑えたままコムイに理由を追求した。
このままでは本気で怪我人が出かねない。


「神田くんには言ってないけど、今回の任務は男子禁制の場所へ行くんだ」
「だったら何だ」
「女の子であるちゃんは兎も角、神田くんもラビも“男”のままでは中に入るどころか門前払いだ」
「もしかして…」

ラビが「いやーな予感」と顔色を変える。
神田も何となく言いたい事が分かったのだろうか、今は大人しくただ顔を強張らせていた。


「だからこれを着て、2人には女装して任務に当たってもらいたいんだよ」

その言葉に、神田が当然の如く六幻を抜いた事は言うまでも無い。



  



アレンにも是非着せてあげたかったんですが、
神田には絶対これを着せてやるとずっと目論んでいたので、神田は絶対に外せませんでした。
そしてそろそろラビも出してあげたいと思っていたので神田とラビのチョイス。
誰しもが騙されたであろう神田の性別。土翁と空夜のアリアの最後のシーンで男だと気づくほどでした(笑)

2009/02/21