「はいどーもぉ。科学班室長のコムイ・リーです!」

リナリーに部屋へ通されると、白衣のような服装に眼鏡をかけた男性がいた。
やたらテンションが高いな、と思った事は心の内にしまっておこう。


「歓迎するよアレンくん。いやーさっきは大変だったね〜」

きょろきょろと部屋の中を見渡すアレンに、コムイが景気よく話しかける。
がしかし、同じ空間にいた誰しもが、先程の出来事はむしろこちらも被害者だと言いたげに聞いていた。





クロス・マリアンの弟子








「リーバー班長」
「あぁ、

コムイが恐らくアレンの腕でも修理しているのだろう。
ガゴゴ、ズドドと物凄い音と共に「ギャーーー」という断末魔に近い雄叫びが部屋から響いてきている。

そんな中、は部屋の外にいたリーバーに話しかける。


「お前何処行ってたんだ。いつの間にかいなくなるから」
「新人さんでしょ。正式な挨拶するなら部屋着じゃ悪いと思って」

着替えてきたの、と団服を摘んで見せると、リーバーは納得したように「ああ」と頷いた。
はリーバーから視線を外して扉から中を覗きこむ。
確かにあれは、コムイの言う「ショッキング」な光景だ。


「(私も気をつけよ〜)」
「ところで、アレンがクロス元帥の弟子とかって言ってたが、知ってたか?」

今日はその話題がよく出るなと思った。
は曖昧に誤魔化すような笑みを作る。


「まぁ、ちょっとね。恐らく彼は知らないだろうけど」
「あの人ちゃんと生きてんだな」
「みたいだね」

「あ、っ」

リーバーと話していると、リナリーが扉から顔を出した。
リナリーと入れ替わりに、リーバーは仕事場へと戻っていく。


「急にいなくなっちゃったから心配したわ」
「ごめんごめん。着替えてきたから」
「そういえば、アレンくんにの事紹介しておいたの」
「彼、何て?」
「師匠に弟子が居たなんて初めて知ったって」
「そうだろうね」

自分も吃驚だ。
まさか自分以外にもあの人が弟子を取っていたなんて。
それも珍しく“女”絡みではない。


「(彼、美人な姉とか妹がいたのかしら)」

ようやく治療が終わったのだろう。
蒼白な表情で呆然としているアレンを見やる。
どちらにせよ、今の状態じゃ話も聞けそうにない。


「出直すね」
「え?」
「どうせこの後ヘブラスカの所にでも行くんだろうし」
「そう、だけど…いいの?」
「急ぎじゃないしね。あ、良ければ部屋だけ教えて?戻る前に挨拶だけ済ませておくから」

はアレンを気遣って時間をずらす事にした。
リナリーからアレンの部屋の場所を聞くと、礼を告げて一度その場を離れる。
ヘブラスカのところに一緒に行くのは苦ではないが、大元帥に会うのは正直控えたい。
あそこは、あまり好きではないから。


“戦え それがイノセンスに選ばれたお前の宿命…”


いつしか聞いた言葉が重く圧し掛かる。
宿命。それは、逃げられない運命。


「戦うわよ。言われなくても…」

呟いて、は闇の中に飲まれていった。









“アレン…お前に 神の加護があらんことを…”

ヘブラスカが意味深に残した言葉を頭で反芻させながら、アレンはとぼとぼと用意してもらった部屋へ向かっていた。
ようやく言われていた場所まで来ると、扉の直ぐ側に誰か居るのが見えた。
アレンは足を止めて、闇に縁取られた人物を見る。
向こうもアレンに気がついたのだろう。
俯いていた顔を上げて、アレンの方へ顔を向ける。


「初めまして、アレン・ウォーカーくん」

静かな廊下に透き通るような女性の声が響いた。
凭れていた壁から背中を離すと、コツリと彼女のブーツが鳴って一歩足が踏み出される。
光の下に彼女の姿が露になり、アレンは失礼だとは思いながらも彼女をマジマジと見てしまった。

東洋人特有の肌の白さ。
リナリーのように真っ黒ではないが、黒に近い髪。
そして黒い団服。
もしかしたら、この女性ひとがリナリーの言っていた“”という女性なのかもしれない。
アレンの予想は、次の言葉によって的中した。


「私の名前は。和名ではになるの。エクソシストよ。それから」

日本人の名前の響きはとても美しいものだなぁ、と思っていると、がにこっと微笑む。
思わず顔に熱が集中していくのが分かった。


「クロス・マリアンの一番弟子。そして、あなたの姉弟子に当たるの。宜しくね?」

幼い顔立ちだが、恐らく年齢としは自分よりも上なのだろう。
アレンは呆然と立ち尽くしながら考えていたが、ハッとして我に返る。
そしてゆっくりとに近寄ると、手を差し出した。


「初めまして。アレン・ウォーカーです」
「宜しく、ウォーカーくん」
「アレンで良いですよ?」
「そう?じゃあアレン。私の事もでいいよ」

お互いに握手を交わすと、はじーっとアレンを見詰めた。
アレンもアレンで、に見詰められて困ったように眉を寄せる。


「あの…」
「あぁ、ごめんなさい、つい」

苦笑するを見て、アレンは心の中で「普通の人」だなと思う。
クロスの女性の趣味はどちらかと言えばグラマラスで、色気があって、オトナの雰囲気が漂う女性が多かった。
しかしは至って普通の女性に見える。
別に魅力がない訳ではないが、クロスの趣向とは違う気がする。


「(は特別なんだろうか…)」
「ところでアレン。あの馬鹿師匠、まだ健在?」

ぴし、とアレンが固まった。
に目を向けると、にっこりと微笑まれる。
冷ややかな空気を感じるのは気のせいだろうか。


「け…健在、だと思います…」
「そ。何か言ってた?師匠」

笑っているのだが、何故だかとっても肌寒いものを感じる。
アレンは何となくがクロスの弟子であった事を肌で実感する。
修羅場を潜ってきている、そんな気がした。


「えっと…ハジメテはとって置け、と」

の纏う空気の温度が、更に低くなった気がした。



  



アレンとファーストコンタクト。
ヒロインの名前は洋名と和名で違いますが、その説明は設定の方をご覧下さい。

2008/10/31