《入城を許可します アレン・ウォーカーくん》

ごぉ、という地響きを立てて扉が開く。
と同時に再び刀を突きつけられ、アレンはまたしても壁に張り付く形となった。





クロス・マリアンの弟子








《待って待って神田くん》
「コムイか…どういうことだ」
《ごめんねー早トチリ!その子クロス元帥の弟子だった。ほら、謝ってリーバー班長》
《オレのせいみたいな言い方ーー!!》

リーバーはとんだとばっちりを受け抗議したが、コムイは我関せずの表情でリーバーのインカムを掴んでいる。


《ティムキャンピーが付いてるのが何よりの証拠だよ。彼はボクらの仲間だ》


そう言われるも、神田は未だ表情を変えず警戒を解く様子はない。
しばらく神田がアレンを睨み付けていると、神田の頭にぱこっ、と良い音を立ててバインダーが当てられた。


「もー。やめなさいって言ってるでしょ!早く入らないと門閉めちゃうわよ」
「「「………」」」

今までの緊迫していた空気が一挙にして崩れ去った。
現れたのはリナリーで、場にそぐわない雰囲気に叩かれた神田はともかく、アレンとモニター越しの2人までもが黙る。


「入んなさい!」

有無も言わさぬ様相に、2人は渋々と教団内に入っていくのであった。









「私は室長助手のリナリー。室長の所まで案内するわね」
「よろしく」

挨拶を終えると、今まで同じ場所に居た神田が踵を返して別方向へ歩き出した。
それに気が付いたアレンは、「あ、カンダ」と気軽に声をかける。


「……って名前でしたよね…?」

振り返った神田は警戒心剥きだしでアレンを見る。
足を止めているところをみると、悪い人間ではないのは分かる。


「よろしく」

アレンが握手を求めて手を差し出すが、神田は振り返った恰好のまま
「呪われてる奴と握手なんかするかよ」と言葉を残して行ってしまった。
差別だ、とアレンがワナワナ打ち震えていると、リナリーがフォローするように言葉を付け足す。


「ごめんね、任務から戻ったばかりで気が立ってるの」

普段もあんな様子だ、とは言えなかった。









「神田!」

部屋へ戻る神田を呼び止めたのはだった。
足を止め、パタパタと駆けてくるを見やる。


「……何だ」
「あらら、機嫌悪いね。さっきの子の事?」
「うるせぇ」

とは言いつつも構ってくれるのは神田の優しさだ。
がくすと笑うと、神田が横目にの格好を眺めた。
視線が戻ってくると同時に、はピッと背筋を伸ばす。


「新しいエクソシストにお目通りしようと思って、団服に着替えたの」

襟をもう一度伸ばして、きちんとチャックを上まで閉める。
それを見ていた神田は、「はぁ」と溜め息を漏らして、スッとの髪に手を伸ばした。
はらり、と前髪が少し下りてきて、は神田を見つめる。


「前髪、乱れてんだよ」
「…有難う、神田」

フン、と鼻を鳴らしたが、これは照れている時の仕草。
嬉しくなって笑うと、神田が徐に口を開いた。


「アイツ、元帥クロスの弟子らしいな」
「みたいだね。私も師匠とアレンって名前聞いて、これは是非お話してみたいなって思って」
「顔見知りか?」
「昔、ちょっとね」

意味深には笑みを作ると、「さて」と廊下の向こうへと視線を逃がした。
あまり、踏み入って欲しいことではないらしい。


「私行くね」
「……」
「任務から帰ったばっかで怪我してるんだから、ちゃんと休まないとダメだよ」
「それはお前も同じだろ?むしろ、回復しないお前の方が性質が悪い」
「む。神田だって、あんまり調子に乗ってると、思うように体が動かなくなるんだからね」
「……」

言い当てられたようで、けれどどこか的を得ていない言葉。
神田はしばらく無言でを見ていたが、そのまま視線を外してとは別方向へと歩き始めた。
そんな神田の背中に、は声を掛ける。


「言い忘れてたけど、―――お帰り、神田!」

神田が振り返る事はなかったが、むしろその反応の方がなんだか神田らしくて、は笑って背を向けた。









「アレンくんってクロス元帥の所にいたのよね?」

しばらく教団内を歩きながら、リナリーはアレンに話しかける。
リナリーの言葉に、アレンは「はい」と答えた。


「実はこの教団内にも一人、クロス元帥の弟子だった人がいるのよ?」
「え…?そうなんですか…?」

それは初耳だ、と言わんばかりにアレンは目を見開いた。
クロスが自分以外にも弟子を持っていたということにも驚いたが、それ以前に。


「(その人も苦労したんだろうなぁ〜…師匠だし)」
「昨日任務が終わって帰ってきたばっかりだから、多分会えるわよ?
さっきまで一緒に居たんだけど、気が付いたら何処かに行っちゃってて」

脳内で鬱々とクロスの事を思い出しているアレンに、リナリーが苦笑しながら言葉を次ぐ。
会える、という言葉に、アレンは期待を膨らませる。


「どんな方なんですか?」
「会った事も、聞いた事もないの?」
「ええ。師匠に弟子が居たって事も初めて知りましたし」

クロスと知り合って3年。
その時は確かに、クロスと自分以外の人間はいなかったはず。
記憶を巡らせていると、リナリーが続ける。


っていう日本人の女の子よ」

という名前に、アレンの脳内である言葉が甦った。
あれは3ヶ月前の出来事。



“いいかアレン。もしって女に逢ったら伝えろ。“ハジメテ”はとって置け、とな。
 それから、をキズモノにしないようきちんと見張っておけ。いいな”


それがどういう意味なのかは良く分からないが、とにかく念を押されたのは
彼女が何者にも傷つけられぬようにという事。


「(いったいどんな人なんだろう)」

そんな事を考えているうちに、とうとうある部屋へと辿り着いたのであった。



  



ごめんね、相変わらずヒロイン出番が少ない(汗)
秘密の多いヒロインちゃんですが、ちゃんと後々色々明かしていくつもりなので宜しくお願いします。

2008/10/31