「な…なんでこんなトコにあんなもん建てたんだ」

教団前、崖の中間地点にその人物はいた。
白髪に赤い左手。彼の名はアレン・ウォーカー。
現在、黒の教団を目指して登高中である。


「や…やっと着いた…。エクソシスト総本部…黒の教団」

へろへろになりながらもなんとか崖を登りきると、アレンの目の前にデカデカとした大きな建物が立ちはだかった。
まるで塔のように高いそれは、空を突き破るように聳え立つ。


「……かな?」

看板もなければ表札もない。
ここが黒の教団だと確認するものはないが、雰囲気はそれっぽい。
アレンは怪しみながらも立ち上がり、入り口を目指して歩き出した。





クロス・マリアンの弟子








「なんだいこの子は!?ダメだよ部外者入れちゃあ〜〜〜〜なんで落とさなかったの!?」

黒の教団本部室長であるコムイの声に、科学班の面々が反応しモニターに集まってきた。
するとモニター前にいた科学班班長であるリーバーが「あ コムイ室長」と、コムイを振り返って言う。


「それが微妙に部外者っぽくねーんスよね」
「ここ見て兄さん」

同じくモニターを見ていたツインテールの女の子が画面を指さして付け加えるように口を開く。
ちなみにこの場にそぐわしくない彼女はリナリー・リー。コムイの妹であり、エクソシスト兼室長助手を勤めている。


「この子クロス元帥のゴーレム連れてるのよ」

その言葉に、コムイはハタ、と動きを止めた。
すると同時に、外に居るゴーレムが拾った音声がスピーカーから流れる。


『クロス・マリアン神父の紹介で来たアレン・ウォーカーです。教団の幹部の方に謁見したいのですが』


丁寧な物言いでアレンは言う。
すると室内はざわつき、ぼそぼそと「元帥の知り合いか?あの人生きてたのか」なんて声が聞こえた。


「「紹介」って言ってますけど、室長何か聞いてます?」

リーバーが問いかけると、コムイはマグカップに口をつけたまま数秒考える。
しかし記憶にないのか、「知らない」と答えた。


《後ろの門番の身体検査受けて》


アレンは目の前をパタパタと浮遊するゴーレムから聞こえた声に「え?」と後ろを振り返ってみた。
すると扉付近に何やら顔のようなものが張り付いている。
しばらく見つめたのち、「どうも」と声をかけると、顔はぐおっと伸びてきてアレンを見下ろした。

レントゲン検査を行うと、アレンの姿がブレた。
バグかと思いきや、一瞬額にペンタクルが照合される。
その瞬間、教団中に“ブー”っとけたたましい音が鳴り響いた。


「こいつアウトォォオオ!!!」

門番の声が再び教団内を走り抜ける。
コムイは思わず飲んでいたコーヒーを噴出した。


「へっ!?」
「こつバグだ!額のペンタクルに呪われてやがる!アウトだアウト!!」

門番はとうとう泣き出してしまった。
アレンは蒼顔している。


「ペンタクルはアクマのマーク!!こいつ奴等の…千年伯爵の仲間かもだー!!!」

アレンはその言葉に自分自身も驚き、科学班ではパニックに陥りそうになっている。
そんな中、『スパイ侵入 スパイ侵入!』と門番はわめいていた。


「おい、城内のエクソシストは………」
「大丈夫じゃ」
「神田がもう着いたわ」

モニターに映し出された姿に、リナリーは振り返って答えた。
と、そのままリナリーの目は扉の方を見やっていた。
そこに居たのは、寝ぼけ眼の一人の少女の姿。


!」
「‥‥侵入者だって?まったく騒がしい‥」

頭痛でも起こしそうな勢いだと言わんばかりに、と呼ばれた少女は米神を押さえた。
この少女の名は
教団が誇るエクソシストのうちの1名である。
長袖のTシャツにズボンというラフな格好で、おそらく今まで眠っていたのだろう。
リナリーの隣に並ぶと、ジッと画面を覗き込んだ。


、もう体はいいのか?」

モニターを見ているに話しかけたのはリーバーだった。
は画面に目をやったまま、それに受け答える。


「うん、寝たらだいぶ良くなった」
「お前も神田も怪我が絶えないからな…婦長が文句言ってたぞ」
「知ってる。私も小言言われたから」

リーバーを振り返って苦笑すると、神田が六幻を発動させてアレンに突っ込んでいる所だった。
しかし、刀を向けられたアレンは慌てて大きな声で叫ぶ。


『待って、ホント待って!僕はホントに敵じゃないですって!クロス師匠から紹介状が送られてるはずです!!』

「クロス師匠…?」

アレンの言葉に神田はピタリと寸前で刀を止めた。
また、同じくクロスという名前にももう一度モニターを見てアレンをマジマジと見やる。


『元帥から…?紹介状…?』
『そう、紹介状…――――コムイって人宛に』


噴出したコーヒーを拭っていたコムイはピタリと動きを止めた。
それと同じくして、皆の視線がコムイに突き刺さる。
例外なくもコムイを見やり、はぁ、と溜め息が零れた。

コムイはびし、と指先を一人の科学班員に向けると、「ボクの机調べて!」と命令を下した。
男はげんなりしたように「アレをっスか…」と机を眺めると、周りから非難の声が上がり、居た堪れなくなったのか
コムイは挙手をして「ボクも手伝うよ」と机に駆け寄って行く。


「あった!ありましたぁ!!クロス元帥からの手紙です!」
「読んで!」
「“コムイへ 近々アレンというガキをそっちに送るのでヨロシクな BYクロス”です」
「アレン…」

手紙の内容を聞いていたは、アレンという名前をもう一度呟くと、一人踵を返して部屋を出て行く。
生憎それに気がついたものは、誰も居なかった。



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スターダスト・レクイエム始動しました。
全然ヒロイン出てきてなくってごめんなさい…。
やっぱり原作沿いって難しいね…。

2008/10/30