「逃げてくん!」

アレンを収容したコムリンの標的はとリナリーになっていた。
がリナリーを抱えて飛ぼうとした時、リナリーが一瞬身動ぎをする。


「リナリー……?」

コムリンがこちらを目掛けて腕を振り下ろす所だった。





黒の教団壊滅未遂事件








ドォン!という破壊音と共に、とリナリーが居た足場が壊された。
もくもくと煙が立ち昇り、コムイが壮絶に叫ぶ。


「キャアアアアー!リナリー!!くん!!ボクのリナリーとくんが!!!」
「室長落ちる!!」

本気で助けに行こうとコムイは装置の上を駆け出したが、コムイにはのように空を飛ぶ能力もなければ
元より助け出す能力も持っていない。
科学班員が必死に助けに行こうとしたコムイを押さえ込んでいる。


「!し、室長あれ!」
「!」

そんな中ジョニーがある一点を指差した。
コムイは悲愴にくれながらもそちらに目を向ける。


大砲の先あそこ…」

そこに居たのは、今の一撃でやられたと思っていたとリナリーの姿。
大砲の上にふらふらしながらも立つのはリナリーで、その直ぐ側にはが羽を羽ばたかせている。


「「リナリー!!!!」」
「アレンくんとの声が聞こえた…。帰ってきてるの…?」
「私はここだよ、リナリー」

ぼんやりしながらもリナリーは声が聞こえたほうに目を向けた。
すると純白の羽根が目に入り、続いて少し傷を負っているが目に映る。


‥‥?」
「うん、ただいま」
「ケガ、してる‥‥」
「ちょっとね」

リナリーが手を伸ばしての頬に触れた。
かすり傷だったので既に傷口は塞がっているが、血が固まってしまっている。
は笑って見せたが、リナリーは表情を変えずにそのままイノセンスを無言で解放した。


「リ、リナリー…?」
は…守るよ」
「え…?」
《エクソシストは手術ーー!!》
「!」

リナリーがボソッと何かを呟いた。
は聞きとれずリナリーを見る。
その間にも標的をマークしたコムリンが腕を振り上げてこちらへ飛んできた。
リナリーがダークブーツを使って飛躍したのに合わせて、も飛び上がる。


「リナリーやる気みたいだし。私もイノセンス使おう」

−イノセンス発動!−
ダークブーツを発動したリナリーを見て、もイノセンスを手にする。
今までがイノセンスを発動しなかったのはなんだかコムイに申し訳ないからだ。
あんなのでも、科学班の皆を思っての事なのだろう。
ちょっと方向性がずれてしまっているような気もするが。
その間にもコムリンは科学班の乗る移動装置にしがみ付いていて、重さに耐えられず傾き始めていた。
どうにかしたいが、今が使えるカテゴリの中には生憎と活用できそうなものはない。


「リナリー!!この中にアレンがいるんだ」
「アレンが捕らえられてる。助けるなら私も手伝うよ」

リーバーは、リナリーにアレンがコムリンに捕らえられていることを告げた。
同じくリナリーの側に舞い降りたはコムリンを捉えたままイノセンスを構える。


《リナリー、、捕獲》
「リナリー!くん!」

コムリンがサイト内にとリナリーを捕捉する。
コムイが叫ぶと同時に、とリナリーは頷いてコムリンに向かった。


項目コード:007 Lanza」

が創造書より槍を取り出だすと、ヒュンと回転させてコムリンの顔面だと思わしき所を突き刺す。
と同時に、リナリーもダークブーツによる蹴りを放った。
バリンとガラス部分が割れると一度距離を取って離れる。
それを見ていたコムイは蒼白とした様子で声にならない叫びを上げ、リナリーは体勢を整えるよう着地する。
途端コムリンが我を忘れたかのようにレーザー光線を放ってきた。
は巧に羽を動かしてそれを交わし、同じくリナリーも軽やかに避けていく。


「へっへばぁか。イノセンスを発動したリナリーを捕らえられるもんかよ…。胡蝶のように天空を舞い、鋼鉄の破壊力で地に堕ちる。それがリナリーの対アクマ武器『黒い靴』だ。それにリデルを背に纏ったは女神と称されるほどの飛行力を持つ、宙を自由自在に駆る事のできる唯一の人間だ。黒の教団が誇る最強にして最も美しい2人」

黒い靴ダークブーツによって天空を舞う胡蝶・リナリー。
リデルを背に纏うことによって宙を自在に駆る女神・
黒の教団でこの2人を知らない人間はいない。
並び称される存在。


「いくよ、リナリー」
「うん」

リナリーが頷いたのを確認しては槍を大きく横に凪ぐ。
高く跳躍したリナリーはそのまま足を振り下ろして縦に裂いた。
コムリンの体が分裂されると、絡み付いていた装置から落ちて行く。


「やった…」
「アレン!無事か!?」
「なんとか…」

コムリンの中に辛うじて残っていたアレンはリーバーによってようやく救出される。
包帯でグルグル巻きにされており、ティムまで一緒に巻かれている。


「いいぞリナリー!!ブッ壊せー」
「カッコいいーーー」

科学班が一団となってリナリーとにエールを送った。
まるで何処かのアイドルのようなはやし立てようだ。
武器を構えるリナリーとの背後で「ブッ壊せ」コールが鳴り響く中、
最早諦めていたと思っていたコムイがバッと割って入ってきた。


「待つんだリナリー、くん!」

最後の一撃を加えようとダークブーツを持ち上げたリナリーと、
槍を頭上に構えたが一旦攻撃を休めてコムイを見る。


「コムリンは悪くない!悪いのはコーヒーだよ!!」
「アンタ…」
「ゲ、室長っ」
「いつの間にあんなトコへ」

四方八方から聞こえてくるのはコムイへの非難。
慕われるべき室長が泣いて呆れるといった様子だ。
とリナリーはただただ攻撃の手を止めたまま無表情でコムイの言い訳を聞いてやる。


「罪を憎んで人を憎まず。コーヒーを憎んでコムリンを憎まずだ。リナリー、くん」

コムイなりの精一杯な弁解なんだろう。
聞いている側としては弁解どころか聞くに堪えない言い訳にしか聞こえない。
は溜め息を零し、リナリーはやはり黙ったままだった。


「兄さん…」
「コムイさん…」

分かってくれた!?とコムイが顔を上げた時、それはとリナリーが攻撃を繰り出す瞬間だった。


「ちょっと反省してきて」
「ついでにしばらく永眠してやすんでくるといいよ」

リナリーがダークブーツのままコムリンを蹴り落とし、は槍で突いた。
あ〜れ〜と雄叫びを残しながら落下していくコムリンとコムイを、科学班およびリナリーとは静かに見送る。


「なんだかな、もう…」

そう呟いたのはいったい誰だったか。
こうしてコムイのコムリン騒動はめでたく幕を閉じた。



  



リナリーリナリーと騒がしいコムイですが、ちとヒロインも入れてみました(苦笑)
何だかんだでコムイから見てリナリーは妹として大事にしていますが、
ヒロインもまた家族のように(或いはそれ以上に)思っているという事も意図して。
次から新しい章です!
(黒の教団壊滅未遂事件 了)

2008/11/18