「私のイノセンスはね、元々こっちの…装備型ブレスレットだけだったの」
「え…?」

更に驚くべき事実が判明した。
アレンは思わず言葉を忘れてのブレスレットを眺める。


「首元の十字架イノセンスには別の宿主がいた。けれど私がそれを受け継いで使用している」
「それは…可能な事なんですか?」
「さぁ?でも実際私が使ってるんだから可能なんじゃない?」

それもそうか、とアレンは曖昧に頷く。
可能であるから現にはイノセンスを使用できているのだ。
は先を続ける。


「使用する事は可能でも、このイノセンスは別の人のもの。だからかな、拒絶反応が少し出てるの」
「拒絶、反応?」
「そ。私が任務に就くにあたって同行者がいる理由はそこ。私この2つのイノセンスとのシンクロ率、凄い低いから」
「え?」
「アレンがヘブラスカの所でどれだけの数値を割り出したのかは分からないけど、私のシンクロ率は62%」
「62‥‥??」

アレンの脳裏にヘブラスカの言葉が甦る。
『シンクロ率が低いほど発動は困難となり適合者も危険になる…』
は自分自身でシンクロ率が低いと言った。
つまりの負担になっているという事なのだろう。


「2つとも、62%…?」
「いいえ、違うわ」

どうやらゴールが見えてきたようだ。
薄暗かった地下水路の向こう側に明かりが見える。


「2つで、62%」

その数値はとても絶望的なものだった。





黒の教団壊滅未遂事件








ガコンという音と共にゴンドラが岸辺に寄せられる。
は驚きに呆けているアレンを見て、とりあえず先に上がらせてもらう事にした。
グッと伸びをしてから、アレンを振り返る。


「アーレン。いつまでそうしてるつもり?行くよ?」

は未だゴンドラ内で座っているアレンに手を出した。
その目はなんだかの事を心配しているようだったが、はそんな心配を解くように笑ってみせる。


「大丈夫だって。私もちゃんと一人前のエクソシストになって、1人でも立ち向かえるように努力してるんだから」
「‥‥‥‥」
「笑って、アレン」

その言葉に、なんだか頑張っているに申し訳ない気がして、ようやく笑顔を見せた。
そして差し出されている手を取り、ようやく陸地に足を着けたのだった。









「だいぶ遅くなっちゃいましたね〜〜〜」
「この嵐で汽車が遅れましたから…」
「雨酷かったもんね。早く報告済ましてお風呂入って寝よ」

スタスタと歩き出したを追ってアレンも1歩を踏み出す。
しかし重大な事に気がついて足を止めた。


「回収したイノセンスはどうしたらいいのかな」
「科学班の方なら誰か起きてらっしゃると思いますよ」
「リーバー班長なら起きてると思うよ?きっと」
「そうなんですか。じゃあ行きましょうか

足を止めていてくれたにアレンが歩み寄ると、前方の方でドサという音がした。
アレンとが何気なく目線をそちらにやると、倒れているリナリーの姿が。
は慌ててリナリーを抱き起こす。


「え、ちょ、リナリー!?」
「どうしたんですか!!」

体を揺すってみたがリナリーは目を開ける気配はない。
はもしかして伯爵が!?と階段上を見上げたが、そこにはふらふらになったある人物が目に映る。


「ちょ、リーバー班長?」

が叫ぶと同時にリーバーがぐらりと揺れた。
すかさずアレンがリーバーを受け止めて「何があったんですか」と問い尋ねる。


「に…逃げろ」
「まさかリーバー班長…」

は前にもこんな展開がなかっただろうかと記憶を巡らせていた。
そしてある事を思い出すと、予感よ的中しないでくれと祈りを込めながらリーバーを見つめる。


「コムリンが来る…」
「は?」
「やっぱり…!?」

何処からか地響きが聞こえてきて、それは次第に距離を縮めているようだった。
アレンが何だそれはと言いたげに眉を寄せると、はハッと音の方向を確定する。
すると直ぐ真横の壁が物凄い破壊音と共にぶち破られた。
予感は見事、的中してしまったようだ。


「!?」
「来たぁ」

言うや否や、それ――コムリンは水路に着地して水しぶきの雨を降らせる。
アレンは驚き逃げ惑い、はリナリーを抱き締めてアレンとリーバーの側へと避難する。


「な、何アレ?何アレ!?」
「くっそなんて足の速い奴だ…」
「とんだハタ迷惑だわ」

ぐっしょりと濡れたはアレンにリナリーを受け渡して団服を脱ぐ。
絞れるほどに濡れてしまったそれに「また服が濡れた…」とぶつぶつ文句を言う。
そんな事をしていると、コムリンがこちらを顧みた。
ピピピピと機械音がして、「発…見!」と何かを呟いた。
そのレーダーに似た目は、アレン、リナリーを見つめている。


《リナリー・リー。アレン・ウォーカー。。エクソシスト3名発見》
「!」
「げ」

団服を絞っていたは標的に自分も入ってしまった事に表情を固まらせた。
同じく名前を呼ばれたアレンは驚きに目を見開いている。


「逃げろアレン!!こいつはエクソシストを狙ってる!!」
《手術ダーーー!!》

何でエクソシストを!?とが思っているうちにも、コムリンは腕を振り上げて恐ろしい事を口走った。
手術なんて受けてたまるか。
は呆然としているアレンの背中にリナリーをさっさと背負わせると、その背中を押して階段を登らせる。
いつの間にか逃走体勢に入っていたリーバーとトマは我先にと階段を猛ダッシュ中だ。


「うわわわわっ、追ってくる!追ってくる!!」
「いいからアレン走って!」

とりあえずアレンがリナリーを背負わされている事に文句は言わないので良かった。
はリナリーを背負ったアレンを後ろから何とか押してコムリンを振り返る。
恐ろしい移動スピードだ。


「リーバーさんワケがわかりません!!」
「私にも分かるように説明してよリーバー班長!」

リーバーに追いついたアレンは恐ろしい形相でリーバーに解釈を求めた。
同じく任務疲れで動かされているもリーバーに説明を求める。


「ウム、あれはだな!コムイ室長が造った万能ロボ「コムリン」つって…見ての通り暴走してる!」
「「何で!?」」

とアレンの声がハモる。
するとリーバーが走りながらも30分前の事を回想してくれた。



  



はい、新章に突入しましたー。コムリン事件ですよ。
リナリーと少し絡ませて、アレンともこの後ちょっとまたイベント用意したいと思います。

2008/11/14