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任務から帰還したとアレン、そしてトマは黒の教団の地下水路にいた。 時刻も大分遅いようで、はふぁと欠伸を零す。 「疲れた……」 「随分と汽車に揺られましたからね」 「女の子にあれだけの揺れを強要するなんて…」 は腰を擦った。 汽車に揺られる事数時間。 立ち歩くなどしていれば幾分かはマシだったのかもしれないが、任務疲れも相俟っては車内で転寝をしていた。 どうやらそのせいで腰が痛いらしい。 「大丈夫、ですか…?」 「ん〜……まぁ、眠れば平気かな」 寄生型でもあるはアレンと違って食欲ではなく睡眠欲に影響が出ている。 その為眠っている事が多いようで、一度寝てしまえば中々起きられず本人も困っているらしい。 アレンは苦笑した後、ふとある事を思い出してしばし考える。 教団の人間は何処となく皆秘密を抱えているように思う。 それは勿論アレンにも言える事であったが、殊更については謎が多い。 教団内のエクソシストを全員把握している訳ではないので他にどんなタイプがいるのかは分からない。 しかしが持つイノセンスのタイプは何処か違うような気がしていた。 いつの間にか出現しているイノセンス。 しかも見る度見る度形を変えている。 いくつもイノセンスを持っているのかと思ったが、そんなに持っている訳ではない。 そもそも多数のイノセンスが扱えれば元帥であっても可笑しくはないのだが、は元帥でもなければ、 桁違いの強さを持っているという訳でもないようだ。 そんな中でアレンが一番気になっていたのはの衰弱だ。 今回の任務で一番の軽傷はであったと言っても過言ではない。 しかしは後半殆ど弱りきっていた。 何処かに大ダメージを受けたのかと思ったがそうでもないようで、アレンは首を傾げる。 アレンの脳裏に、司令室での会話が思い出された。 「…」 「んー…?」 今にも眠りの淵へ落ちて行ってしまいそうな声に、アレンはやはり疲れているのかと思った。 しかしはゆっくりと縁に預けていた体を起こすと、「何?」と話を聞いてくれる体勢になる。 「あ、その…コムイさんが言ってた事なんですけど…」 「うん?」 「はどうして1人で任務に行けないんですか…?」 言ってアレンは更に考えた。 もしかしたら元々任務というのはエクソシスト2名以上で就任するものなのかもしれない。 やっぱり質問を取り下げようかと思ったが、はアレンを真っ直ぐ見ていた。 アレンは思わず開きかけた口を閉ざす。 「他の皆が1人で出る任務があるのかと問われると、正直私も分からない。私は1人で任務を任せてもらった事がないからね」 「はい…」 「でも私が任務に就く時必ず誰かが同行するのはそれとは全く関係ない事なの」 「どういう意味ですか…?」 は苦痛に似たような表情で笑う。 何処か辛そうな、そんな気がした。 「私はまだ、エクソシストとして半人前だから」 その言葉がどういう意味なのか、アレンは漠然とした答えに意味もなく息を殺した。 |
| 黒の教団壊滅未遂事件 |
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「半人…前?」 「そう、半人前」 トマが無言でゴンドラを進める。 時折オールとゴンドラがぶつかる音がして、小船は揺れた。 それに合わせて向かい合っていたとアレンの髪の毛が揺れる。 「私ね、イノセンスを2つ所持してるの。それは知ってた?」 「いえ…僕もずっと疑問に思ってて」 うん、とは頷いて、パッと目の前に手を出してみた。 手の上には何も乗っていない。 「この手の上には何も無いわね。つまり“無”な訳」 「はい」 「けど私のイノセンスは違う。ある一定の際限から、“有”を作り出すことが出来る」 言っている事が少し難しい。 アレンがきゅ、と眉を寄せるのを見て、は苦笑を零した。 そして徐に自分の左首元の襟を捲って見せる。 そこに見えたものに、アレンはハッと目を見開いた。 「これが私の寄生型のイノセンス。で、こっちが装備型のイノセンス」 今度は右手首をツイと差し出すと、ブレスレットを指差した。 の首に埋め込まれていたものは確かに寄生型のイノセンス。 そして手首に通されていたものは装備型のイノセンスだ。 「は寄生型でもあり装備型でもあると言いましたよね?それって2つのイノセンスを扱えるって事ですか?」 「んー‥‥正直私も自分のイノセンスがどのようなものであるかは把握できてないの。だから科学班の力を借りて調べてもらってるんだけど」 そう言って、はイノセンスを発動させる。 何もなかった手の上に分厚い辞典のような本が現れた。 しかしアレンは疑問にマジマジととイノセンスを見ていた。 「あれ?イノセンスが形状を変えてない…?」 の手に本としてイノセンスが現れた事は分かった。 しかしそれは腕のブレスレットが形を変えたものだと思ったのだが、の腕には未だブレスレットが下がっている。 寄生型のイノセンスはこのように物体として取り出すことは出来ないので、が今手にしているのはイノセンスそのものではない事が分かる。 「これはイノセンスが作り出したいわば媒介のようなもの」 「媒介…」 「私のイノセンスは2つで1つのイノセンスでね、どちらか1つが欠けるとその機能をまともに果たしてくれないの」 「2つで…1つ?」 やはり難しい。 通常有あるものは1つの物体から1つの物しか作り出すことは出来ない。 しかし今が手にしている物は違う。 イノセンスが形を変えた物でもなければ、もともとが所有していた物でもない。 つまり何もなかった所から、本当にただ現れたのだ。 「こっちの…首元のイノセンスはいわば装備型のイノセンスが発動できるようにする為のスイッチのようなもの。実際私が今手にしているのはブレスから出てきた物なの」 「はぁ…」 「で、私の武器はコレから生成される」 持っていた本を持ち上げて言う。 本から生成というのはどういう意味なのだろうか。 「私のイノセンスの名前はクリエイト。つまり創造書。あらゆるモノを創造することが出来るイノセンス」 「あ、だからは戦いの中武器を沢山変えていたんですね」 「そう、状況に合わせてタイプを変えられるのがこのイノセンスの凄い所。ただ、私の場合武器を扱っているだけだから、神田のように1つの武器を極める事は出来ないし、アレンみたいに様々な攻撃が出来る訳じゃない」 「武器一つ一つに必殺技がないって事ですか?」 「そう」 通常の装備型や寄生型と違い、の武器には限りがある。 つまり武器本来が持つ力しか引き出す事ができないのだ。 槍なら突きや凪ぐ、矢なら矢を射る、盾なら攻撃を防ぐ。 多彩なモーションを与えてくれる代わりに、特殊な攻撃法はないという事だ。 「それとが1人で任務につけないのとはどういう関係が…」 「問題はそこなんだよね」 はクリエイトを閉じるとそのまま発動を解いた。 本は見る見るうちに空気に溶けるようにして消えていく。 「私のイノセンスはね、元々こっちの… 「え…?」 アレンを再び衝撃が襲った。 ← † → ちょっと表現とか難しかったですかね? 分かり辛かったと思われた方もいらっしゃると思うのでここで少し説明しますと、 ヒロインのイノセンスは首のイノセンスとブレスレットの2つで1つのイノセンス。 首のイノセンスは特殊な能力を持っているのですが今回は出てこないのでそこには触れずに説明すると、 首のイノセンスはブレスレットを使えるようにする為のだけのスイッチの役割を果たすイノセンスです。 そしてブレスレットであるイノセンスは直接武器の生成に使える訳ではありません。 ブレスレットがそのまま形を変えて武器になるのではなく、更に武器を出す創造書を出す為のものです。 またついている珠の数を見ることで使用出来る武器の数が分かります 今回は2つまでしか使う事が出来ないのですが、例を挙げると創造書を用いて剣と盾を出す事ができる。そんな感じです。 創造書にはとある文字が記されており、そのページを「項目(コード)」を読み上げる事によって開きます。 そしてそこから武器を出す、というしくみです。 もう少し説明的な会話が続きます。 2008/11/14 |