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「僕がこのふたりの「犠牲」になればいいですか?」 静かな空間に、アレンの力強い言葉が響く。 驚きに目を見開いたは、隣で神田と対峙するアレンを見つめる。 握られた手が、「任せてください」と言っているように思えた。 |
| 土翁と空夜のアリア |
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「ただ自分達の望む最期を迎えたがってるだけなんです」 アレンとの脳裏に、先ほどのグゾルの願いの言葉が浮かぶ。 『私が死ぬ時、私の手でお前を壊させてくれ』 死期を悟ったグゾルの、最後の願い。 「それまでこの人形からはイノセンスは取れません!僕が…アクマを破壊すれば問題ないでしょう!?」 泣きそうな表情のアレンを見て、はアレンの気持ちの強さを読み取った。 アレンは半端な気持ちでこの言葉を口にしているのではない。 それだけの覚悟を持って言っているのだ。 「犠牲ばかりで勝つ戦争なんて、虚しいだけですよ!」 アレンはの手を離して神田に一歩歩み寄った。 がハラハラしながら神田の様子を眺めていると、神田の目が見開かれ表情が止まる。 きっと神田には理解できないのだろう。 感情を持って任務に臨むことが。 犠牲のない戦いがないということが。 神田は、歩み寄ったアレンを拒むようにアレンを殴った。 今の衝撃でアレンは尻餅をつき、神田は急に動いた事で貧血を起こしてしゃがみ込んでしまう。 口を挟めずに様子を見ていたトマが神田に声をかけ、はアレンに駆け寄った。 「とんだ甘さだなおい…可哀想なら他人の為に自分を切り売りするってか…?」 違う。は口篭るようにして心の中で言う。 アレンは、自分を粗末に扱うつもりでもなくて、当然神田の言う他人に同情している訳でもなんでもない。 「テメェに大事なものは無いのかよ!!!」 言い返したかったが、アレンは先ほどからずっと俯いたままだ。 アレンの肩に添えた手に力を込めると、アレンがぽつりと言葉を紡ぎ出した。 「大事なものは…昔失くした。可哀想とか、そんなキレイな理由あんま持ってないよ。自分がただそういうトコ見たくないだけ。それだけだ」 「アレン…?」 アレンの横顔は何かを悟ったかのように切なげで、は思わず名前を呼ぶ。 すると肩に置いていたの手に、アレンがゆっくりと手を重ねてくれた。 「僕はちっぽけな人間だから、大きい世界より目の前のものに心が向く。切り捨てられません」 それが人間というものなのだろう。 果ての見えない大きな世界を救うなんて自分では到底考えられない。 それならばまずは目に映るものから救っていけば、もしかしたら世界を救うことに繋がるのではないだろうか。 「守れるなら、守りたい!」 アレンの言葉のあと、はズブ、という音を聞いた。 同じようにそれを聞いた神田とアレンも驚いて音の方向―― ララとグゾルのいた所を見やる。 「グゾル…」 「っっ、ララ!グゾルっ!!」 が2人に手を伸ばしたが、それよりも早く2人を貫いた手が砂の中へと引っ張られていく。 すぐさまアレン、神田、は警戒態勢に入った。 「奴だ!!」 叫ぶと同時に、背後で砂の中から突如アクマが飛び出してきた。 神田は六幻を構え、も創造書を手にすると、ズリュと嫌な音がしてアクマの手にイノセンスが取り出される。 「イノセンスもーーらいっ!!!」 片方の手に人形へと戻ってしまったララと、もう片方に体を貫かれたグゾルが捕らわれている。 アクマはイノセンスを取り出した 地面に倒れたグゾルは、息も絶え絶えになりながらも必死にララの名前を呼びながら手を伸ばしている。 ララは、壊れたガラクタのようになっていて、グゾルの声にも反応する事は無かった。 「ララっ、グゾルっっ」 「おいバカっ、無闇に動くな!」 辺りが薄い静電気の膜で包まれたかのように、空気が張り詰めていた。 それはアレンから発せられるもので、それに気がついた神田が今にも飛び出していきそうなを押し留める。 同じく空気が変わった事に気がついたのであろうアクマも、イノセンスから目を離してこちらへ目を向けた。 「返せよ、そのイノセンス」 「アレン…?」 「返せ」 アレンの様子はいつもと打って変わり、鋭い目つきでアクマを見据えている。 その左腕はボコボコと通常の大きさを逸脱して腕の形状を変えていた。 「ウォ…ウォーカー殿の対アクマ武器が…」 「…造り変えるつもりね」 「寄生 それにしても、と神田はアレンの様子を冷静に観察していた。 まるでアレンは人が変わったかのように禍々しい殺気を放っている。 それに伴って武器にも禍々しさが窺えるように、おぞましい形を成していた。 次の瞬間、アレンが瞬間的にアクマの前に移動を開始した。 「バカ!まだ武器の造形が出来てないのに…」 「大丈夫、私がサポートするっ」 は言うや否や、創造書を開くと「 すると見る見るうちに1本の槍が創造され、はそれを引き抜くとアクマ目掛けて槍を投げつけた。 槍は見事アクマに突き刺さり、アクマの足止めとしてその場に射止める。 「行って!アレンっ!!」 が叫ぶと同時に、アレンの武器の造形が完成し放射孔を持つ大砲のようなものが出来上がった。 と同時に、物凄い光の束がアレンから発射される。 「(撃った…!!)」 「ギャア!」 無数の棒体の銃弾がアクマに向かって打ち込まれ、アレンは更に容赦なくアクマを串刺しにしていく。 山のように積みあがった銃弾に乗っかると、辺りを鋭く見渡す。 すると傍らの砂の中を、まるで這うように動く塊があった。 「そんなんで砂になってる私は壊せないよ〜」 「捕らえたつもりだったけど、逃げられたか」 先程槍で射止めたはずだったが、相手は砂になってしまった為に槍での拘束から逃れたのだろう。 は再び創造書を広げて掲げる。 「項目:009 Flecha」 静かに項目を唱えるとの手には弓が現れる。 流麗に弓を引くと、光が収束され矢となり番えられた。 それは動き回るアクマの動きを規制するようにアクマの進行方向へと次々と放たれる。 行き場をなくしたアクマは、アレンへの攻撃に出た。 砂を媒体とする体でアレンを飲み込み、 「ケケケ捕まえた!もうダメだ、もうダメだお前!」 「アレン!」 「何回刺したら死ぬかな〜?」 アクマは高笑いと共に自分の体をドスドスと刺し始めた。 当然中にいるアレンは串刺しにされてしまう。 そう思ったトマは慌てたようにアレンの名を呼んだが、と神田は黙ってその場を動く事は無かった。 先ほどからピリピリと感じている殺気は、まだ消えてはいない。 次の瞬間、ガキィインという金属がぶつかる音がしたと思いきや、アクマの体を裂いてアレンが中から出てきた。 今まで自分の体を突いていた槍が壊される。 「( アレンはまるで最初から知っていたかのように、今新しく出来た武器を操っていた。 しかし、勿論この武器についての知識があった訳ではない。 イノセンスが、 新しい、対アクマ武器の使い方を。 アレンの武器が再び変わる。 銃の形状を保ったまま、銃口から光り輝く剣を作り出した。 そのまま、アクマの体を縦に裂く。 「あ!砂の皮膚が!!」 「これで生身だな」 アクマが地面に落ち、アレンは華麗に着地すると再びイノセンスを銃タイプへと切り替える。 「写し取る時間はやらない。ブチ抜いてやる」 「まだお前の腕が残ってるもんね!」 アクマとアレンの、お互いの武器が交錯した。 ← † → ヒロインもちょっと連携させてみた。 しっかし…本当逆ハーって難しい……。 2008/11/11 |