ガガガガガと、壁を引き裂くような音が地下通路に響く。
そこにはララとグゾルの2人の姿。
2人は何処かの穴に落ちると、砂の上に落下した。


「大丈夫?グゾル」
「ああ…ララが落ちるスピードを緩めてくれたからたいした衝撃じゃあなかったよ…」
「よかった」

そう言って笑ったララの頭には、先ほどまでの帽子は乗っていなかった。
かわりにとても長く綺麗な髪が広がっている。
また、笑う姿は美しい少女の姿をしていた。
帽子の下に隠されていたのは機械で、おそらく人形のボディの一部なのだろう。


「!ララ、手を潰してしまったのか!?」
「いいの、全然。どうせグゾルが動かなくなったら私も動かなくなるんだもの。それまでもてば、いいの」

ララがボロボロになった手をグゾルに伸ばした。
その手はもうグゾルの手を掴む事もできないが、触れる事はまだできる。


「うっ」
「!グゾル」
「はぁっ、はっ…ゲホッ」

咳き込むと同時に、グゾルの口から血が零れた。
ボタボタと砂の上に赤い血溜まりを作ると、ララに包み込むように抱き締められる。


「グゾル…もう、あまり時間はないのね」

もっと一緒にいたいという願いの言葉を裏に隠して、ララは呟く。
荒い呼吸を繰り返すグゾルを強く抱き締めて、徐々に失われていくグゾルの残命じかんを考える。


「私に、何か出来ることはない‥‥?」

あなたの為だったら、あなたと一緒であるのなら。
このイノセンスいのちが奪われても構わない。

いつまでも一緒に、いつまでも……





土翁と空夜のアリア








「モヤシ!!」

神田の怒鳴り声が聞こえた。
は走る速度を上げて勢い良く角を曲がる。
するとそこには、“アレン”を抱えたアレンと、恐ろしい剣幕でアレンを睨む神田がいた。
アレンが生きていて良かったという安堵の後、いったい何がどうしてこういう状況になっているのかを理解しようと、は必死で頭を働かせる。


「どういうつもりだテメェ…!!なんでアクマを庇いやがった!!!」

神田の言葉に、は「え?」と首をかしげた。
アレンの腕の中にいる“アレン”。
気を失っているようだが、どうやら今しゃべっているのが本物のアレンのようだ。


「神田、僕にはアクマを見分けられる「目」があるんです」

その言葉に、はいつしかの記憶を巡らせていた。
あれは初めて彼を見た日だっただろうか。

『呪いなんて、厄介なものに魅入られたな』
『……』
『アクマが見える眼…か』

師匠は言った。アクマが見える眼であるのだと。
それを持っていたのが、白髪を持った幼い少年であるのだと。


「……」
「ウォーカー…殿」

が記憶を飛ばしていると、耳にか細い声が聞こえてきた。
それはアレンに抱かれている“アレン”から聞こえた気がした。
アレンにも聞こえていたのだろう。
腕に抱える“アレン”を覗き込んだ後、べり、という音を立てて顔の皮を剥がす。


「トマ!!?」
「何…っ」
「!!」

トマの顔が見えた瞬間に、はイノセンスを発動させ神田の背後へ回った。
と同時、アレンの叫ぶような「そっちのトマがアクマだ神田!!!」という忠告が聞こえ、の持つ盾に衝撃が走る。


「っ」

踏ん張りきれなかったは神田と共に吹き飛ばされ、壁を突き破って激突した。
の手からカランと盾が取り零れ、ずるりと壁を伝って崩れ落ちる。


「っかは」

なんて力だ。
一方向のみのアクマの弾丸と物理攻撃を防ぐ事に長ける「海 賊 の 盾ヴァイキングエスクード」がまるで歯が立たない。
の手を離れた盾はスッと形を失い、のブレスレットに還る。


「か、んだ…」

が神田を探してゆっくりと起き上がると、神田はアクマによって壁に張り付けにされていた。
眩暈を起こしそうになりながらも、は再びイノセンスを手にする。


「テメェ…いつの間に…っ」
「へへへお前と合流した時からだよ!黄色いゴーレムを潰した時、一緒にあのトマって奴も見つけたんだ」

アレンがの側に駆け寄って崩れ落ちそうになる体を支えてくれた。
アレンの肩を借りながらもはアクマを睨みつける。


「こいつの「姿」なら写してもバレないと思ってさぁ。ほら、お前も左右逆なの気にしてただろ?白髪の奴の「姿」をあいつに被した…へへへ。私は賢いんだ」

なんという成長だろう。
レベルが1つ上がるだけでこんなにも賢い頭脳が生まれる。


「私の皮膚は写し紙。まんまと殺られたな、お前」
「…はっ!」

アクマに捕らわれながらも、神田は挑発的に笑って見せた。
それが合図だったかのように、神田の体をアクマが引き裂く。


「っっ、かんだぁっ」

今にも飛び出していきそうなを、アレンは支えながらも必死に押し留めた。
神田ほどではないが、も相当な痛手を負っている。
ケケケとアクマの高笑いが響く中、神田はずるりと壁から滑り落ちたが倒れることはなかった。
倒れまいと、両足を踏ん張っている。


「アレ?死ねよ!」

アクマが拳を叩きつけ、神田を潰そうとするが、それでも神田は倒れない。


「死ぬかよ…」

ボタボタと神田の足元に血の池が広がる。
尋常ではない出血であるにも関わらず、神田はやはりその場に踏み止まっていた。


「俺は…あの人を見つけるまで死ぬワケにはいかねェんだよ…」

そう呟いた後、神田の目から光が消えた。
“あの人”という単語に、はくっと唇を噛む。


「ギャヒャヒャヒャヒャ!すげー立ちながら死んだぞ!」

アクマの言葉に、がアレンの支えを振り払い駆け出そうかと思ったが、
意外にも先に行動を起こしたのはアレンだった。
アクマを吹き飛ばし、凄まじい怒号を発する。


「神田!!」

アレンは神田を揺さぶると、浅く呼吸をしているのを確認して肩に担ぎ上げる。


「アレン、こっち!」

自分の足で立ち上がったも、トマを支えながら六幻を引っこ抜くとアレンを先導して別の道を指示した。
アレンは頷くと、を追って走り出した。



  



アレンがアレンでアレンは…と、アレンアレンと何度も連呼してしまって申し訳ない。
もうちょっとなんかあっただろうと思ったのですが、どうしようもなかった…。
読みづらいのは承知しております、、、どうか皆様もご理解の程をお願いします…。(反省)

2008/11/08