名前も良く分からない島に上陸した。
無人島ではないけれど、然程大きくもない島だった。

はベポと買出しを頼まれ、島の中心街にある市場で食材を買い込み、今まさに戻ってきたばかり。
しかし、船に近づくと子供の泣き声が聞こえてきて、とベポは顔を見合わせた。
この船に、泣き喚くような子供はいない。
下ろした梯子に足を掛けて甲板まで登ると。
そこには子供をあやすハートの海賊団の姿があった。



「…何してんの?」

大の大人が揃いも揃って、変な顔をしていたり、玩具らしきものを片手に持っていたり。
その真ん中には5才にも満たないんじゃないかというほど小さな子供がいて。
正直今の図は、子供を取り囲んで海賊が何かをしている様子にしか見えなかった。


〜っ!!!良いところにっ!」
「な、何よ…」

泣きついてきたシャチとペンギンを交互に見やり、は不審そうに眉を顰めた。
後から登ってきたベポも、と同じ心境なのか愛嬌のある目を丸めて「何してるの?」と首を傾げる。


「ちょ、助けてくれっ」
「はい?」
「いいから、こっち来てくれって!」
「ぬぁ、ちょ、何っ!?」

右腕をシャチに、左腕をペンギンに捕まえられて、はずるずるとクルー達の輪の中へ連行された。
クルー達も皆お手上げ状態なのか、を縋るような目で見つめ、そして道を開ける。
後は頼んだっ!と放り出されたのは泣いている子供の目の前で。


「…子供…」
「ママーァっ!!!」
「うわっ」

を見るや否や、子供は目掛けて抱きついてきた。
腰ほどにも満たない身長であるためよろける事はしなかったが、の足にすがり付いてわんわんと泣き叫んでいる。


「やっぱり女がいると違うよなぁ…」
「いやー…がいて助かったな」

泣いてはいるが先程よりも事態が好転したのか、クルーは関心してと子供を眺めた。
その言葉を制するようにクルーに一睨みを利かせると、はぐずぐずと鼻を鳴らす子供をそっと抱き上げてやった。


「(男の子か…)」
「ママ…ぁ」
「よしよし。泣かない泣かない」

抱っこをしてやると、まるでそうする事が当たり前だったかのように男の子はの首に腕を回した。
背中を叩いて揺すってやると、落ち着きを取り戻してきたのかしゃくり上げていた呼吸も落ち着いてくる。
それを見ていた周りのクルーは、「おお!」と謎の歓声を上げた。






 悪人面の良い奴







「ところで、この子どうしたの?」

腕の中で大人しくなった男の子を横目に、は気まずそうにしているクルーへ問い掛けた。
誰も事態をちゃんと把握出来ていないのか口をもごもごとしており、はペンギンとシャチへ視線を投げる。


「いや…それがだな、船に勝手に乗り込んでたんだよ…」
「船に?」
「迷い込んだんだろうと思って降ろそうと近づいたんだが…」
「泣いちゃったんだ」
「「まぁ」」

残念ながら、ハートの海賊団という可愛いらしい名前であっても、修羅場を潜り抜けた海賊であって。
そしてこの船のマスコット的存在であるベポと、この船唯一の女性クルーであるは不在であって。
大きな大人達、それも可愛らしい容姿ではないクルーに囲まれて不安になってしまったのだろう。
は大きな溜め息を吐くと、「馬鹿」とだけ小さく呟いた。


「持ち場に居ないと思えば…おいお前ら、何サボってやがる」
「あ、キャプテン」

船楼から降ってきたのはこの船のキャプテン、トラファルガー・ローのものだった。
ベポがその名を呼ぶと、ローはちらりと船員を一瞥してからの腕の中にいる子供を捉える。
ツカツカとこちらまで歩いてくると、「何だそれは」と色のない声で言う。


「迷い込んだ子供だそうですよ」
「ならさっさと降ろせ」
「いや、そうしたいんですけど…この子って何処から来たのよ。この周辺に民家はなかったよ?」

勿論子供をこのままにしておく事は出来ないので、降ろさなくてはならないのだが。
問題はここでポイと、放り出しても大丈夫かと言う事で。
買出しに出た時周辺を見てきたは、記憶を巡らせながら人が居そうな場所を思い出そうとしていた。
しかし、民家は確か中心街より北に密集していたと記憶している。
残念ながらここは南の沿岸。
北とは間逆である為、こんな小さな子供が一人でここまで来たとは到底思えなかった。
危険な島ではないが、中心街から南側は森が茂っており、子供が一人でいるのは危ない。


「や…気付いたら乗ってたからからなぁ…おれ達もそこまでは…」
「はぁ」

は息を吐き出すとムッツリと黙っていた男の子の顔を覗き込んで優しく微笑んで見せた。
男の子は最初こそ警戒していたものの、の笑顔に安堵したのか、服を握り締めながらの顔をじっと見上げる。


「君、名前は?」
「……り、く」
「リクくんか。いくつ?」
「ん」

片手で指を3本出してに見せる。
どうやら彼は3歳の、リクという男の子らしい。


「よし、リクくん。どうやって、ここに来たのかな?お母さんと?」
「ママは、ごはん、かうって、言ってた」
「ん〜…やっぱりお母さんと逸れてここまで来たのかなー…」
「くま…」
「え?」

は「くま」という言葉に反応してリクを見下ろした。
すると人垣の向こうに居たベポをじっと見つめていて。
そっとリクを地面に下ろしてやると、リクはよたよたとしながらも真っ直ぐに歩き始め。


「くまっ!」
「え!」

クルーが道を開ける中進んだ先に見つけたベポの巨体にタックルすると、リクはぎゅーっとベポを抱き締めた。
やはりこの年頃はベポのような可愛いものが好きらしい。
笑顔になったリクを横目に、はローを苦い表情で見上げた。





子供のネタが書きたかったんですけども…。
改めて書き終わったのを読んでみて、なんか想像してたのと違う…と思いました(苦笑)
とりあえず、クマ(ベポ)を見るとやっぱり飛びつきたくなるのが子供です。
あとタイトル良くないですか!!
「悪人面の良い奴」
見た目ほら、皆さん厳ついけどさー。良い所もあるんだぜっていう話。
(あ、続きます!)

2010/04/28