そよそよと、心地良い風が吹き抜け、は浮き上がった髪を押さえた。
暖かい日差しが甲板に降り注いでおり、の顔は思わず綻ぶ。

ふと足を向けた先に、見知った姿を発見した。
甲板の上に出してあったウッドチェア。
そこにある人物が寝ていた。
腕を首の下に敷いて、手には読んでいたのであろう本が、お腹の上に伏せるようにして押し付けられている。


「キャプテン…?」

近づいて声を掛けてみたが、眠っていた人物――ローは起きる気配はないようだ。


「め、珍しい…」

近づいたの気配に気付かない事も勿論だったが、それより何より、こんな所で無防備に寝ている事が珍しかった。
眩しくないのかな、と思いながらも、は太陽を見上げていた視線をローへと下ろした。


「うう〜ん、マジマジ見る機会って少ないけど…キャプテンって綺麗、だよね」

明らかに不健康そうなのに、無駄に顔だけは整っているというべきか。
ローの顔をのぞき込みながら、はじっとローの顔を見つめていた。

閉じられた瞳には、いつものような鋭さはなく。
スッとした鼻に、薄い唇。
意外にもあどけない寝顔に、はくすっと笑った。


「こうしてればカッコいいのになぁー」
「そりゃ結構な事だが、」
「…へ」
「見物料を取るぜ?」
「っ!?」

のぞき込んでいたローの目が一瞬のうちに開き、視線が重なった。
薄くて整っているなと思った唇はニヒルな笑みを浮かべていて、の体はあっという間にローと同じ椅子の上へと引き寄せられている。


「きゃ、キャプテンいつからっ!?」
「『珍しい』辺りだったか?」
「それって最初からって言うんですけど!」

起きてたならなんで何も言わないんですか!趣味悪いですっ!と怒鳴るが、ローはくぁ、と大きな欠伸をしただけで答えはくれない。
ムッと顔を顰めただったが、掴まれた腕を引き抜こうとして手を持ち上げる。


「おい、暴れるな」
「なら離して下さい」

何故再び眠る態勢に入ってるのか。
は握られた手首をぐいぐいと引っ張ってローの拘束から抜け出そうとするも、ローがその手を緩める気配はまったくない。
上に持ち上げようとした所で、もう片方の腕が無防備なの腰に絡みつきそのままを引き寄せる。


「ぬぁ!」
「…色気のねェ声だな」
「きゃ、キャプテンっ!!!」

予期せぬ出来事にの体は従順にローの腕の中へ落ちた。
から上がった声が想像と違ったのか、ローは眉を寄せて閉じかけた片目を開ける。
しかし、にとってはローの反応よりも、近づきすぎてしまったローとの距離をどう空けるかしか考えられなかった。
腕を突っ張ってみようと四苦八苦するを視界に収めながらも、ローはスッとの頬へ手を伸ばす。


「……きゃぷ、」
「フフ、顔が赤いぞ?どうした?」

思考回路が焼き切れたかのように動けなくなったとは対照的に、ローはの目を真っ直ぐ捉えたままいつものように笑った。
余裕のあるローを恨めしそうに見たは、ムッと唇を尖らせて抵抗を止める。


「もう抵抗はいいのか?」
「そうやってキャプテンが私の反応見て楽しんでるの、知ってますからね」
「ほォ、学習したのか」
「そんなもの、キャプテン見てれば分かります」

はぁ、とは息を吐き出してローから視線を逸らす。
凭れかかるにも恥ずかしくて、最後の抵抗とばかりに腕を立ててローとの間に隙間を作っていた。
これは境界線だ。


「キャプテンは何処まで本気なのか、ときどき分からなくなります…」

からかっているのは、からかわれているだからこそ良く分かっている。
子猫が伸ばした手にじゃれてくるように、ローはただ猫じゃらしを揺らしているようなもの。
何処までが遊びで、何処までが本気なのか、その境が分からなくなってきていた。

が声色を変えた為か、ローは黙ったままゆっくりと瞬きを繰り返した。
腰に回していた腕に力を入れようとして、やめた。


「本気だと言ったら、お前はどうする」
「………え、」

困惑した状態でローを見れば、ローはから視線を外し別の場所を見ていた。
いくら見つめてもこちらを向いてくれないローに、本意を読みかねて口を閉ざす。

本気だったら。
もし本気だったら、私はどうすればいいのだろう。
でもどういう意味で?


「あの、きゃぷ」
「今のは忘れろ」
「……」
「おれは寝る。だから、」
「っわ、」

腰を強く引かれて、は今度こそローの上へ倒れ込んだ。
ローの胸元に顔を押し付けるような形で、そのまま腕が回される。
所謂、抱き締められているという状態だ。


「お前も昼寝に付き合え」
「きゃ、キャプテンっ」
「黙ってろ」

ぐっと胸に押し付けられて、は頬をローの胸に添える形になった。
ドキドキと脈打つこの心音は、私?それともキャプテン?
顔は上げられないけれど、聞こえる吐息は落ち着いていて、もしかしたら眠っているのかもしれない。


「酷いよキャプテン…こんなんじゃ、眠れないよ」






 心地良いのに苦しくて









あっはっは!もう私ローに抱かれて眠りたいです←
あー・・・本当妄想っていうか、リアルにローが見えそうで怖いですね。(現実世界で)
一応甘くしたつもりだったんですが、我が家のローは無愛想すぎて甘さが感じられません。
目指せ甘々!!!!!精神で頑張ります。

2010/04/27