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「おー、!飲んでるか!!」 「飲んでるよ〜。うわ、お酒臭いよ!あっちいってー!」 「なにをー!!」 なんて事のない日常の一コマ。 お酒を飲んで酔っ払って。 海賊だもん、そんな日だって見慣れた光景だ。 「、時間はいいの?」 クルーに挟まれて飲んでいる中で、後ろからくいくいと服を引っ張られる。 振り返ればベポがいて、時計を指差しながらこっそりと耳打ちをした。 「あ、本当だ。じゃあバトンタッチ」 「アイアイ、引き受けるよ」 「なんだぁ!ションベンか!」 「はいはい。お酒もほどほどにね」 相当酔っ払っているようだ。 絡んで腕を引っ張る彼を諭しながら剥がして、ベポと位置を入れ替わる。 扉の前に立って一度中を振り返った後、は食堂を後にした。 向かう先は浴室だった。 男所帯の中お風呂に入るのは中々に苦労する事で、ある一定の時間帯だけは男性使用禁止にさせて貰った。 と言っても今日は浮かれてお酒を飲みすぎた為か、その時間もタイムリミットが近づいている。 急いで部屋で入浴の準備を済ませると、浴室内に誰もいないのを確認して扉を閉めた。 「今日は皆酔い潰れるだろうし長く入っても大丈夫かなー」 脱衣所に荷物を置いて、髪の毛を結んで結い上げる。 そのまま上着に手をかけてインナーも脱ぎ、下着は付けたまま今度は下を脱ごうとベルトに手を掛けた時だった。 がちゃ、という音がして思わず手を止め扉の方を見る。 すると先客がいるという事に気が付いた向こう側が足を止めてこちらを真っ直ぐに凝視した。 どれほどの時間が経っただろうか。 きっと実際はほんの一瞬だったのだろうが、その時間がとてつもなく長く感じた。 見開いた目を一度瞬きさせて、口が思わず開く。 「きゃ、キャプテン…」 「……」 やっと搾り出せた言葉が、相手を認識するための言葉だった。 そう。扉を開けて鉢合わせてしまったのは、同じようにバスタオルを抱えたローで。 は自分の体を隠すことも忘れて、何も考えられないでいた。 じっと見つめていたローの眉が一度ぴくりと動いた後、目がゆっくりとの体に向けられる。 それを冷静に見つめていると、ようやくの思考回路が動き出した。 「あ、あわ、あの!キャプテン!えっと、お風呂ですか?す、すみませ、わた、私出ます!出ますんで!!!」 今更ながらに慌て始めたを見たまま動かないローだったが、にとってはそこは問題ではなかった。 とりあえず申し訳ない程度に小さなタオルで前だけを隠すと、広げた洋服などを掻き集めて一緒に抱える。 バクバクと五月蝿い心臓と、徐々に熱を持ち始める頬。 ローに見られたという羞恥が一気に込み上げて、の脳を蝕んでいく。 その為だろうか。考えるという事が欠如して、はあろう事かその格好のまま外に出ようとした。 ローの真横を通り過ぎようとしたその瞬間、ローが腕を捕らえて奥に引き戻す。 「馬鹿か!そんな格好で出るな!」 「え、や、あ、でもっ」 え、何で怒られてんの? え、どうしてこんなに近いの? の思考回路は極限に達していた。 お風呂場でのぼせたような、そんなぐるぐるしたどうでもいい考えが目の前を回っている。 ぎゅ、と荷物を腕に抱えた時だった。 「チッ」 ローが短い舌打ちをして、捕まえられていた腕が勢いよくローに引っ張られる。 腕に抱えた荷物がバラバラと床に散乱して、体を隠していたタオルがはらりと舞い落ちた。 ぎゅ、と抱きしめられ、ローと体が密着した直後。 「あれー…?船長…?」 扉が開き、クルーの誰かの声が聞こえた。 間延びした声、呂律の回らない舌。 どうやら酔っ払っているようだった。 「せんちょーも便所っすか…?」 「何寝ぼけてやがる、便所はここじゃねェよ」 「あっれぇ〜?そうでしたっけ…ハハハ、申し訳ないっす」 そう言って男はばったりと扉を閉めると、覚束ない足音は扉の向こうへ消えていく。 ホッと落ち着けるはずなのに、の体は未だ硬直したままだった。 目の前に広がるのはローの着るパーカーで、体には巻きつけられたローの腕。 極力体を小さくする必要があったのか、腕ごと抱き込まれたは、文字通り身動き一つ出来ない状況だった。 何よりも前髪を掠めるローの吐息が熱くて、の許容範囲は当に超えている。 「お前は…」 「っ」 言葉の後、ローの腕の力が強まった。 下は穿いているものの、上に下着以外纏っていない状態で、ローの熱がダイレクトに伝わり、 それは逆にローへ自分の熱がダイレクトに伝わっているという事だった。 瞬きも出来ないような緊迫したその時間は、緩められたローの腕から開放されてやっと動き始める。 「いや、いい」 離れたローはふい、との体を見ないように大袈裟に顔を背けると、 自分が落としたタオルだけを拾い上げて背を向ける。 も慌てて後ろを向くと、両手で胸元を隠した。 「」 「は、い」 「もう少し警戒心を持て」 「……はい」 まだ、キャプテンが背中越しに立っている。 「ここが男所帯の海賊船だと分かってやっているのか」 「…」 「どうして鍵を掛けなかった。どうしてもっと警戒しない」 「あ、の」 どうしてこんなにも心臓が五月蝿いんだろう。 何でこんなにクラクラするんだろう。 もしかしてまださっき飲んだお酒が抜けきっていないのかもしれない。 言い訳しないと、と思ってすぐの事。 の体は洗面台に押し付けられた。 後ろからローが腕を立てて間に閉じ込めている。 恐る恐る持ち上げた目が捕らえたのは、鏡越しにこちらを見ているローだった。 「おれを、誘ってるのか」 「ち、ちがっ」 鏡の中の自分が目を見開く。 鋭い眼差しを光らせたままのローは、そのままゆっくりと瞼を伏せると、剥き出しだったの肩口に唇を落とした。 「っ!」 「女であるお前の体が、ここではどういう目で見られるのか…考えたことがあるか」 「っん、きゃ、キャプテンっ!」 少し乾いたローの唇がそのまま首筋を辿り、そこを舌で舐め上げた。 ぞくりとした感覚が背筋を辿り、の体が震える。 鏡越しにを見やったローはそのまま耳を甘噛みすると、途端体を離して扉へ足を進めた。 洗面台を握り締めていたはパッとローの背中を振り返る。 「次にそんな格好してたら…分かってるな」 「!!」 ちらりと横目にを窺ったローは、そのまま扉を閉めて出て行ってしまう。 直後、膝から力が抜けたは床にドッと座り込んだ。 ローが口付けた箇所が熱い。 「キャプテンの、馬鹿っ!!」 私が私でいられないのは(ぜんぶあなたのせい) 「あれキャプテン。どこ行ってたんですか」 「っていうか顔赤いっすね」 「うるせェ。酔っただけだ」 なんか、私の日常生活の中にローがいます(重症) 何をしててもローがチラついてしょうがないんですが。 そんな時に思いついたネタ。心臓が掻き乱されて、動悸が治まらない。 2010/04/14 |