(※シャボンディ諸島に上陸ちょっと前のお話)



「次はシャボンディ諸島かー」
「シャボン玉が飛んでるらしいね!楽しみっ!!」

船の食堂で今日のランチを口にしながら、シャチがぼんやりと、はウキウキとしながらまだ見えぬ島に思いを馳せた。
温度差のある二人の意見に、隣で食事をしていたペンギンがクク、と笑う。


「なぁに、ペンギン」
「いや、らしいなと思ってな」
「何よー。いいじゃない。シャボン玉でしょ、カワイイじゃない」
「まだまだお子様だからな、は」
「何だとシャチ!そんなシャチからはソーセージを頂く!」
「おいコラお前!!」

目の前に座るシャチのお皿から端の方に避けてあったソーセージをフォークで突き刺して素早く口に放り込んだ。
口の中で咀嚼すると、シャチがぐぬぬと唸る。
ちなみに端に避けていたのは嫌いだからではなく、好きだから後で食べようとしていたのを、は勿論知っていた。


「フンだ。何がお子様よ。違うでしょー。女の子だからだもん!」
「お前なー…そう思うならその性格少しは直した方がいいぞ」
「嫁の貰い手が不安だな」
「そもそもに船長に振り向いて貰えなくなるぞ」
「なっ、何でそこにキャプテンが出てくんのよ…!」

意味分からない、と呟いて、はお皿に乗っていたサラダを口に突っ込む。
ちょっと不機嫌になったに、やれやれと肩を竦めるペンギンとシャチ。
それに気付かなかったは「ん?」と二人を見るが、揃って「何でもない」と返された。

ガチャ、と開いた食堂の扉。
元々視界に入っていた扉の方へ改めて視線を移せば、そこには今し方まで話題に上がっていたローと、もふもふの白い毛が眩しいベポがいた。
向こうもこちらに気付くと、ローがシャチの隣へ、ベポがもう片方の空いているの隣に座る。


何食べてるの?」
「今日の料理長のランチ。この後デザートが運ばれてくる予定!」
「じゃあおれもそれにしよう」
「船長は?」
「同じもので、デザートは抜きだ」

注文を聞いたシャチが料理長にそれを伝える為に席を立つと、とローの視線が交錯した。
数回瞬きをしただったが、ローが何故か不敵に微笑む。


「……何ですか」
「相変わらず良く食べるな」
「キャプテンは食べなさすぎだと思いますよ。だから細っこいんです」
「自分の体調管理は怠ってない。必要だと思う分だけ摂取すれば十分だろうが」
「……(正論だから言い返せない)」

じとっとローを見ていると、戻って来たシャチがローとベポの前にランチを置いた。
そのまま持っていたデザートをの前に置いてくれる。


「わーい!有難うシャチ!」
「相変わらず甘い物好きだな…お前」

呆れながらも席に腰を下ろすと、早速とばかりにがスプーンをデザートにつけた。
今日のデザートはジェラートだ。


「ところで船長、次の島へは何処へ寄るんですか?」
「…そうだな、」

ペンギンとローの会話に耳を傾けながらもはジェラートを口へ運ぶ手は止めない。
ようやく半分まで来たか、という所で、ローの口から出た言葉に「んぐ、」と変な所へジェラートが滑り込んだ。


「"人間ヒューマンショップ"にでも行くか」
「っぐ、つ」

げほげほ、と嫌な咳をしたに、ベポが水を差し出しながら背中をさすった。
ああ、今はそのふかふかな手が気持ちいい。
むしろこのままその腕の中へ沈んでしまいたい。
は渡された水を飲んでローを睨みつけた。


「キャプテン、」
「何だ」
「キャプテンの趣味に口出しする気はありませんが、悪趣味です」
「分かってるなら口を出すな。余計な世話だな」
「大体何しに行く気ですか?まさか奴隷を買うんじゃないでしょうね」

真剣な顔つきに、ひとつ声色を落としたがローを正面から見据えた。
その視線を受け止めたローはフフ、と目を閉じて笑う。
今の場面に笑える所なんて一つもなかったのだが、余裕そうに笑うローにはますます不機嫌になった。


「おれが奴隷を買ったら困るのか?」
「別にそうじゃないですけど、良い気はしません」
「どうしておれがお前の機嫌の伺いを立てないとならない。この船の船長は誰だ?」
「……キャプテンです」
「ならおれが黒と言えば白も黒になる。決定権はおれにあるという事だ」
「…………」
「この意味、頭の良いお前なら良く分かるだろう」

わざわざ「頭の良い」という言葉を付け足した事が気に食わない。
がムッと黙り込むと、ローはフフと笑いながらランチを食べる手を再開させる。


「まァ安心しろ」
「……何がですか」
「お前以外の人間なんぞに興味はない」
「……は?」

さらりと、まるで日常会話のレベルで今凄い事を言われなかっただろうか。
は口を半開きにしてローを見やる。
そんな視線を受け流しつつも食事を続けるローは、まるで何でもなかったかのような雰囲気だ。


「あのキャプテ、」
「おれが興味を持ってるのはお前だけだ。お前以外の人間、それこそ女には興味がない」
「っ〜!?」

ガタン!と席を立ったは、最後に溶けかけたジェラートを口に流し込むと、「キャプテンのバカ!」というお決まりのセリフを残して食堂を出て行った。
バタンと乱暴に閉められた扉の音を聞きながら、ローは一人くつくつと楽しそうに笑う。


「アイ〜…キャプテン…」
「船長、あれはどうかと…」
「っていうかあれは、告白の域なんじゃ…」

「本当の事だろう?以外の人間に興味はない。だから側に置いておくのが楽しいんじゃねェか」

鬼畜…、ぽつりと隣で呟いたシャチの言葉に更に笑みを深めたロー。
ローの空気は乱れた様子もなく至って普通で。
が少し居たたまれなくなってしまう。






 無意識の翻弄







「アイツ、わざわざデザートを食っていきやがったな。面白い女だ」

フフフ、と笑っているローの傍ら、ベポ、シャチ、ペンギンは重たく息を吐き出した。
心の中で、へのエールを送りながら。





OP部屋に置いてある原作沿いには特に繋がってはいませんが、番外編的な感じで。
さらっと爆弾発言をしてくれるキャプテンが好きです。
こっちが恥ずかしくなるくらい好き勝手囁いて、陥落した様子を見て楽しむキャプテン。
@お題は自家制作。

2010/06/15