ああ、神様。
もしそこにいらっしゃるなら答えて下さい。
どうして私は、キャプテンの隣で寝ているんでしょうか。






 カウントダウンは始まってる







先の戦闘で攻撃を直に受けたの部屋。
幸いにも窓辺の壁付近のみの被害に留まったが、窓辺に置いてあったのベッドは粉々になってしまった。
あろう事か部屋には大きな風穴まで開いており、とてもじゃないがここで寝泊りは出来そうになかった。


「見事にやられたな」

部屋で愕然とするの背後、扉に手を掛けて中を見渡したローはまさに他人事のような口ぶりだった。
苦戦するような敵でもなかったのに、相手方が放った大筒が見事の部屋に命中。
勿論ソイツはの手によりこてんぱんに伸され、同情したクルーが合掌をしたほどだ。


「ちょ…ねぇ、これどれくらいで直る…?」
「壁は早くても2日で直せるが、寝具類は新しいのを買い揃えないと無理だなー…。床で寝るか?」
「や、やだよ!床って揺れとか直で受けるし、次の日節々痛くて最悪なんだもん…」

船に乗り合わせる船大工も出来るクルーに問えば、そんな答えが返ってきた。
どうやら部屋は2日で直るが、この部屋で元の生活をするには次の島で壊れた物を買い揃えないと無理らしい。
ががっくり肩を落とすと、そんなを見てローがくつくつと喉で笑った。


「何ですかキャプテン。人の不幸がそんなに面白いですか?」
「そうだなァ、お前の情けない面を見るのは楽しいぜ?」
「……とりあえず、ここの壁だけ直して貰える?」
「おう、任せとけ」

ローを無視したは、クルーの腕をポンと叩くと、修繕を行ってくれているその背中を見送ってくるりと反転した。
そのままローの横を抜けて廊下へ出ると、何処かへ歩き出そうとする。


「何処へ行く」
「今日の寝床探しですよ。流石にあの部屋じゃ無理ですし」

歩き出したの背後を、ローが追いかける形でついてきた。
の目的地は決まっているのか迷うことなくある場所へと向かっている。
ローも何となくその方向が分かったのか、今度は目を細めての背中へ問い掛けた。


「オイ、何処へ行く気だ」
「何処って食堂ですよ。そこにいると思うし」
「一応聞いておくが、誰がだ」
「ベポですけど」

その答えを聞いて、ローはの腕を引っ張った。
が驚いてローの顔を見上げるが、ローは目を一度合わせるとそのまま別方向へとを引っ張っていく。


「ちょ、ちょ!キャプテン!?」
「黙ってろ」
「でも早くしないと今晩の部屋の確保が!」
「喚くな。五月蝿い」
「ちょっ」

スタスタと、歩幅の大きいローに合わせて小走りになったが辿り着いたのは見覚えのある扉。
他のものとは少し違う、ちょっとだけ豪華な造りのその扉。
ローは迷わずそこへ手を掛けると気にした風もなくを連れて中へ入った。
そのままをソファへ放り投げると、何事もなかったかのように自然と扉を閉める。


「いててて…」
「必要な物があれば自室から持って来い」
「な!あの!キャプテン!?」

ソファに起き上がったは、さも当然なていでいつも座っている椅子に腰を下ろしたローを呆然と見つめた。
サイドテーブルの上に置いてあった本を片手に持ち、その長い指でぺらりと頁を捲る。
思わずそんな動作に見惚れそうになっただったが、立ち上がってローの側へ歩み寄ると、その本を取り上げた。


「何しやがる」
「それは私の台詞ですっ。何なんですか!」
「何がだ。おれはお前の行動の方を問いたいがな」

に本を取られたローは、テーブルに肘をついて片目でを見上げていた。
まるで説明する気ゼロなローの態度に、が目を吊り上げて口を開く。


「私、ベポに用があったんです!」
「だがもう必要はなくなっただろ」
「何言ってるんですか……?」

ローをじっと見つめては答えを待つつもりだったが、ふとある答えに辿り着いて「……まさか」と声を漏らした。
ようやく意味を理解したのか、の表情が見る間に変わっていく。
それを見てフフ、と笑ったローは、若干放心気味のの手から本を取り戻すと先程の頁まで戻した。


「え、もしかしなくても、私にここで寝ろとか言ってます?」
「他の野郎共と一緒に寝るよりマシだろ」
「そ、そんなの無理です!」

声を荒げたに、ローは「ほォ」と読んでいた本から顔を上げた。
その目が少し鋭くて、はぐっと口を噤む。


「他の男の部屋では寝れて、おれの部屋では眠れないか?」
「だってベポは…!!」
「熊だが、この船に乗ってる女はお前だけだろう?
「でも、」
「いいな、次の島までここがお前の寝床だ。分かったら必要な物運んで来い」

有無も言わさずなローの発言に、はそれ以上何も言えなかった。
すっかり本に集中しているローには、何を言っても無駄な事だろう。
は大きな溜め息を落とすと、静かに船長室を後にした。









「くっそ…。皆覚えとけ」

食堂で今日の寝る場所を訊かれた
断じて言うまいと口を閉ざしていたのだが。

、さっさとしないと寝かさないからな』

というローの一言で食堂が凍りついた。
飄々と出て行ったローの背中が見えなくなると同時に、「お前らいつの間にそんな関係に!?」とクルーが馬鹿な発言をした。
勿論そこは殴って制裁をしたが、食堂を出て行くにクルーの謎の声援が掛かり、中には「程ほどにな!」とか、「女らしくするんだぞ!」と、何のアドバイスなのか分からない言葉も混じっていた。


「う…変な事言うから気になっちゃうじゃないか」

自室に戻ってきたは入浴の準備をすると浴場へ向かった。
この後ローの部屋へ戻るのかと思うと憂鬱でならない。
かと言って、まだ壁に穴が空いている部屋で寝るのも、床で寝るのも嫌だった。
幸いにもローの部屋にはソファもある。
あのキャプテンが自分にベッドを譲ってくれるはずもないのは百も承知なので、今日の寝場所はソファなのだろうなぁと思いながら湯に浸かった。


「まぁ…ソファでも寝れればいいんですけど」

むしろ感謝しろよ、なんてローの言葉が脳裏に浮かび、はそのまま湯船に沈んだ。





キャプテンの部屋にお泊まりの巻。
潜水艦の作りっていうか部屋が分からないのでヒロインの部屋もキャプテンの部屋も何処にあるか分からない。
とりあえず壊れる場所にあったという事と、ヒロインとキャプテンの部屋は近いと良い!
あ、続きます。

2010/04/27