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厳しい寒さにも多少のことではへこたれない精神力を持ち合わせてはいるが、それでもまったく寒さを感じないという訳ではない。 「ベーポー!!」 それはこの船の紅一点であるにとっても同じ事で。 今日もまた、の声が船内に響き渡った。 かじかむ指を優しく包んだハートの海賊団に所属するラピス=ラズリ・。 この船唯一の女性 冬島の気候域にあるためか、先日から雪が降り続いており、今日も皆雪かきに勤しんでいた。 勿論もその一人として甲板で雪かきをしていたが、寒さに耐えきれずに声を上げたのだった。 「どうしたの?呼んだ?」 ひょっこりと顔を出したのは同じくハートの海賊団クルーの白クマのベポ。 オレンジ色のツナギから覗くもふもふとしたその手(毛)を見て、は一目散にベポへと駆け寄り――。 「ベポっ!」 「うわぁっ」 ぎゅうっとベポの体に自身を埋めるように抱きついた。 「…?」 「寒いよベポ〜。見てよ!手が真っ赤なの!!」 「手袋は?」 「さっきビチョビチョになっちゃったから置いてきた…」 そう言ったの手は、長時間の雪かきで霜焼けのように赤くなっていた。 見かねたベポが暖めるようにふかふかの手での両手を包み込む。 「もうここはおれがやっておくからいいよ?」 「でもまだこんなに残ってる…」 「凍傷になってからじゃ遅いでしょ?」 「う…じゃあ、明日は私がベポの分も頑張るからね!」 「うん。その代わりちゃんと今日は休んでね?」 「分かった」 申し訳ないと思いながらも、確かにベポの言うことも一理あるので、は渋々頷き、 明日の雪かきを頑張る事を告げてスコップをベポへと差し出したのだった。 ◇ 「あ…??」 「あれ、キャプテン。珍しいですね、この時間に起きてるなんて」 部屋へ戻る途中、曲がり角のところで我らが船長・ローと出くわした。 日は昇っているが、午前中はだいたい部屋から出てこないので、ローが今の時間帯出歩いているのはとても珍しい。 が苦笑すると、ローの目線は両手を擦りあわせるの手に向く。 それを見て、は背伸びをしてローの頬へと手を伸ばした。 「ていっ」 「……冷てェな」 「…もうちょっと、『うわ、冷てっ』とかっていう反応はできないんですか…?」 「何を期待してるんだか知らねェが…まぁ、いい。ちょっと来い」 「え?…え?」 頬に張り付いていたの手を引き剥がすと、ローはその手を掴んで歩きだした。 引っ張られる形で連れてこられたのは船長室だ。 「そこに座れ」 「………な、何するんですか…?」 「何だ?一丁前に警戒してるのか?望みとあればこのまま襲ってやってもいいんだがな」 「そ!そんな事言ってません!」 の反応にくつくつと喉で笑ったローは、「そのままちょっと待ってろ」と一言残して部屋を出ていってしまった。 一人になった船長室では両手を擦りながら見慣れた部屋を見渡す。 幾らか暖かくなったとはいえ、それでも手の赤みはまだ引きそうにない。 するとようやくローが戻ってきた。 脇に抱えているのは湯気の立つ桶と、手にはカップを持っている。 「まずは手だな」 「え…?」 「ったく、何時間外にいたんだ。凍傷になりかけてる」 「わ、そうなんですか!?」 コップを傍らのテーブルに置き、ローはベッドに座っているの前に膝をついた。 跪くような体勢になると、の手を掴んでベッドサイドに置いた桶の中に自分の手ごと浸す。 「ちょ、ちょっとピリピリする…っ」 「それが凍傷だって言ってるんだ」 ちゃぷちゃぷという音が部屋に響く中で、は自分の手を桶の中で暖めてくれるローの手を見ていた。 すっぽりと覆われてしまう自分の手と、それを覆う大きなローの手。 キャプテンの手は大きいな、なんて思いながら顔を上げると、こちらを見ていたローと視線がぶつかってしまった。 たじろいだのが分かったのか、ローが「フフ」と笑った。 「何考えてやがった」 「べ、別に何も考えてないですっ!」 「だったらそんな熱の籠もった目で見るな」 「み、見てませんってば!!」 が慌てれば慌てるほど、ローの機嫌は良くなった。 しかしそれに気付かないは焦って弁解を繰り返す。 「よし、いいぞ」と手を離された時には、ぐったりと疲れきっていた。 「ほら、ココアだ」 「あ…」 先ほど手に持っていたのはどうやらのためのココアだったようだ。 ココアを受け取って両手に包み込むと、ちょうど良い温度でさっそく口付けた。 「しかし良くこの雪の中外に出てられたな」 隣に腰を下ろしたローは、少し湿ったの髪にタオルを乗せながら呆れた。 コップから口を離すと、はローを見やる。 「だって雪かきしないと危ないじゃないですか」 「そんなもんクルーに任せておけ」 「キャプテン、私もクルーなんですけど…」 ムッと唇を尖らせただったが、「そういう意味じゃねぇよ」とローはのカップを取り上げた。 「力仕事は男に任せておけと言ってるんだ」 「私これでも最近力ついてきたんですよ?」 「……あーあー。分かった分かった。明日もどうせやるんだろう?せいぜい凍傷にならないように励め」 意味が通じていないようだったので、ローは奪ったカップをに返すと、ポンポンとの頭を撫でた。 「はい!」とローの言葉を素直に受け取ったは、期待されたと思い両手に拳を作って笑顔で頷く。 そんな笑顔を見て、つい、ローの口元は緩んだ。 あれ?別のネタを仕込んでいたのに使う暇もなかった…!! いつか別の話でリベンジ。。 跪くローと、あの手に包まれたらどれだけ幸せだろうと思っただけの話← 2010/04/05 |