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「あ、雨だ」 ぽつり、と鼻先を打った雫にが顔を上げた。 曇り空だった為、いつ降り出してもおかしくない天気だった。 そんな中キッドの買い物に付き合わされた。 断じてデートではない。 だって「出掛けるぞ。準備しろ」「デート…?」「馬鹿か。荷物持ちだ」とはっきり言われたからだ。 「お頭、雨降ってきたよ」 「面倒だな、この先で雨宿りするぞ」 「えぇ!?船戻った方が早いよ!」 「火薬を持ってんだ。湿気ったら意味がねェ」 言うや否や、が両腕で抱えていた紙袋がキッドの手に渡り、もう片方の手がの手首を掴んだ。 え?と思う間もなく走り出すキッド。 「ぎゃー!降ってきたよぉぉ!」 「チッ、もっと早く走れっ」 「限界ですお頭〜!!!」 一雨去ってそんなやり取りをしながらもなんとか駆け込んだお店の軒先。 お店自体は休みだったようで、シャッターが下りていた。 とは言え、元々そんなに栄えている所じゃない。もしかしたら閉店したのかもしれない。 と言うのも、ここが人通りが多くない場所だからなのだが。 「っひゃー…バケツをひっくり返したような雨ってこういう事言うんでしょうね〜…」 「とんだ災難だな」 「あ、火薬濡れませんでした?」 「ああ」 そう言って見せてくれたのは毛皮のコートの内側に入れられた袋。 よっぽど濡れるのが嫌だったらしい。 懐の中に入れるだなんて、と思っていると、キッドがニヤリと笑ったのが分かった。 「何だ。物足りなさそうな顔だな。いや、物欲しそうと言った方がいいか?」 「…何言ってるんですか。ヘンな事言ってないで、雨が早く止むようにお祈りでもしてて下さい」 「…お前はバカか」 こつんと小突かれた頭をさすりながら、冗談だったのにーと唇を尖らせるとキッドが笑った。 そういう笑い方を今するのは反則だと思う。 が不自然に視線を逸らすと、耳に入る音は雨音だけになった。 雨脚は強く、屋根を叩く音は五月蝿いが、束の間の平穏だな、なんて思ってしまう。 「お頭の頭ぺしゃんこですね」 「うるせェな。ったく、これでも持ってろ」 ぽいと投げ渡されたのはキッドの頭につけられていたゴーグルだ。 自分の手に持つと大きくて、多分着けたとしても頭からずり落ちてくるだろう。 ふと横目に見上げた隣のキッドは、髪から滴る水が鬱陶しいのか、スッと髪に指を通す。 前髪をかき上げる仕草に、はドキリとして何だかいつもと雰囲気が違うと思った。 「っくしゅ、」 そんな事を考えていると、ぶるりと体が震えて思わずくしゃみが零れた。 ずず、と鼻をすすると、「寒いのか?」とキッドが少し心配したように顔を覗き込んでくる。 「大丈夫大丈夫。初夏だし、そんなに寒くはない」 「…濡れちまったな」 ふわりと髪先が揺れて、キッドの無骨な手が顔に張り付いた髪を退けてくれた。 不器用なのに、こういう優しい手付きがちょっと憎い。 不意打ちの優しさっていうのに、女は弱いものだ。 乗せられている感があると思った矢先、目の前に来たキッドの手に身を仰け反るが。 「何を考えてるのか知らねェが、変な顔すんな」 「むはっ」 鼻を抓まれて慌ててその手を跳ねのけた。 何すんだ!と噛み付くと、キッドは「余計変な顔になってたな」なんて言いながら再び髪に指を通した。 「っ、」 「帰ったらシャワーだな」 「一緒には入らないからね」 「雨のシャワーは浴びても湯を浴びるのは駄目とは、どういう理屈だ、そりゃ」 「上手く言っても駄目」 「冷えた体を暖めるだけだろうが」 「何でですかね、卑猥に聞こえるんですが」 じとっと睨むと、キッドが髪を梳いていた手を滑らせて肩を掴んだ。 そのまま強い力で引き寄せられると、ぶつかった先は見なれた素肌。 包まれたのは、キッドが着ている毛皮のコートだ。 「ちょ、」 「暴れるな。火薬が濡れる」 「……何してんの」 「風邪でも引かれたら面倒だからな」 「看病なんてしないくせに」 「おれの相手をするのがいなくなるだろ?」 「何言ってんですか」 「お前こそ何を想像しやがった」 ニヤリ、と笑ったその顔が恨めしい。 叩いてやりたいのに、それが出来ないのは何でかな。 触れている体温が、濡れた服を通して伝わってくるのが、心地いいなんて。 「約束、忘れるなよ?」 「雨止む頃には乾くんじゃないですかね」 「ほお、なら、予約だ」 「何を…っ!?」 首筋に迫るキッド。 突っぱねる間もなく覗かせた歯が、の首筋に噛みついた。 「続きは船でだ。忘れるなよ?」 「っ、最低ですお頭っ」 こんな跡を付けて、どうやって船に帰れと言うのか。 睨みあげたの視線の意味が分かったのか、キッドがニッと笑ってみせた。 「シャワールームに籠るしかねェな」 一雨去って、次に一難。 確信犯は満足そうに笑うのである。 初・キッド夢!誰か良く分からないんですけどどうしたらいいですかね。← 梅雨入りしたし、雨ってのもいい。っていうか髪の毛が良いだろうってのを思って書いた(苦笑) えっちくなっちゃうのはキッドがえろすだからって事で(ヲイ) @雨の季節に10のお題「一雨去って」 2010/06/15 |