「その事で、お話があります」

大火蓮を真っ直ぐに見据えて口を開いた
目を細めた大火蓮を見ると、どうやら話を聞いてくれるらしい。


―― もう一度、私に力を貸して下さい」
『そなた、何を言っておるのか、分かっておろうな』
「はい」
『では、人間というのはよほどの愚か者らしい』

クスクスと笑い始める大蓮帥。
しかしは勇んで一歩足を踏み出すと、深く頭を下げて声を張り上げた。


「お願いします!!私には力が必要なんです!」
『黙れラピスラズリ!!』

ぶわっと大火蓮の覇気と共に熱風が飛んできた。
その熱さに思わず顔を背けると、大火蓮はまるで怒りを顕にするかのように炎を大きくさせている。


『そなたの罪状を述べてみよ!』
「………神の力を多用し…」
『全て述べよというておる!!』
「……虐殺を、行っ…た…」

口にするのが苦しくて、は込み上げた涙をそのままに地面にどっと座り込んだ。
なんて重い、なんて惨たらしい事だろう。
改めて自覚すると、それは取り返しのつかない大きな罪となっていた。


『そなたは我らの力を使い、冒涜するという何とも愚かな行いに走った!』
「…っぅ、」
『あろう事か一度ばかりでなく何度も!』
「……」
『我ら神が、奪い消し去る"死"の役目を担ったのだ!その意味、分かっておろうな!!!!』

膨れ上がった炎に気圧され、は熱風の中ただ項垂れていた。
両手両足に枷をつけても赦されない、たとえこの命を差し出しても赦されない罪だ。


『そなたに貸す力などない!本来ならばラピスラズリの地位を剥奪する所に目を瞑っている事の意味を知れ!!』

捲くし立てるかのように言い捨てた大火蓮は、その身を劫火に変えて姿を消した。
続いて他の神々も静かに姿を消してゆく。
そんな中、一つだけ残る光があった。
が顔を上げると、目の前に立っているのは二大神のうちの1人、大水蓮だった。


『ラピスラズリ、』
「大水蓮…」

しゃがみ込むに指先を伸ばした大水蓮は、そっと零れ落ちるの涙をその手で掬った。
大水蓮に触れた涙は重力に逆らって宙に浮くと、まるでシャボン玉のように上へ上へと昇っていく。


『そなたの流した涙の数、私は覚えています』
「………」
『その涙が、そなたが手を汚して奪った命のために流れたものだというのも』
「…っ!」
『ラピスラズリ、そなたにもう一度問います』

その姿が、いつしかの夜の日と重なった。
あれは、ハートの海賊団の船に乗ってしばらくした日の夜だ。
月だけが照らす海の上で、大水蓮が口を開く。


――‥‥


『ラピスラズリ、』

甲板の隅で蹲っていたの前に現れたのは大水蓮のウィンディーネ。


『そなたに問う。そなたは悲しんでいますか?』

は一つ頷いて俯いた。
握っていた拳を広げて、そこをただぼんやりと見ている。


『そなたに問う。その力は、そなたに必要ですか?』

顔を上げたはぼんやりとウィンディーネを見た。
多くの命を奪ったこの力。
幼い頃から運命を縛ってきたこの力。
必要か、否か。
答えを出せないまま、がただ黙っていると、ウィンディーネは笑った。
伸ばされた手が、トンとの胸をつく。


『そなたに問う。そなたがここに想う大切な人は誰かいますか?』

瞬きをして、は慈母のようなウィンディーネを見た。
ウィンディーネはの視線を受けて優しく微笑む。


『そなたのここに、いつしか大切に想う人が出来た時。我ら大蓮帥は、そなたを赦そう』
「大切な、ひと…」
『いつしか再び我らが相見えるその日まで、そなたの側にいくつかの神々を残しましょう。そなたが寂しくないように…』






 Paenitenti






『そなたに、大切な人は出来ましたか?』

想うのは、願うのは。





キャプテン出てこなくてすみません。
罪の深さと重さ。

2010/06/16