「帰るぞ、お前ら」

おお、と返事が返ってくるのを確認したローは、ひょいとを片手で抱き上げるとスタスタと歩き出した。
降ります!と叫ぶだったが、ローは無視して扉へ向かう。
不意にその足を止めざるを得なくなったのは、ローの背後で人の気配を察知したため。
そこにいたのは、銃を片手に持ったミトだった。


「その女を置いていけ!」
「……こいつはおれ達ハートの海賊団が奪ったまで。所有権はおれにある」
「その女をここで殺せば、もう二度とこんな醜い争いは起こらない!!」
「……随分と勝手な理屈を並べるな」

扉の方を向いてたローが、わざわざミトに向かい合った。
ミトが持つ銃身は震えている。


「神の力欲しさにその力を代々受け継がせてきたそうだが、自らの命惜しさに力を差し出し、戻ってきたら脅威だと言う」
「我々は国の風習に則ったまでだ!!!!しかしその女は、我々が苦しんでいる間も、のうのうと生き、あろう事か帰って来た!!」
「のうのうと?おれには、地獄に見えたがな」
「キャプテン…」
「悪いがこれはもうおれのものだ。手を下したくば、おれから力づくで奪うんだな」

銃口を向けられているにも関わらずこの余裕。
一体何処からくるものなのか気になったが、は誰よりも早くミトが引鉄に指を掛けるのを見ていた。
「absolute」と唱えると同時に放たれる銃弾。
それはローに触れる前にぴたりと止まり、地に落ちた。


「キャプテンを傷つけるのは私が許さない」
「っ!!!」

激昂したミトだったが、ふと背後の気配に銃をそちらへ向けた。
そこに立つのは大火蓮と大水蓮。
大火蓮・サラマンダーは鋭くミトを睨みつけ、大水蓮・ウィンディーネはミトからに視線を移して笑った。


『ラピス=ラズリ・
「…はい、」

ローの腕から降りたは一歩前に出てウィンディーネを見つめ返す。
柔らかい表情が更に穏やかになると、ゆっくりと口を開いた。


『そなたに問う。そなたに、大切な人は出来ましたか?』


もう何度その言葉を聞いたのか分からない。
だが聞かれるたびに、その返答に困っていた。
大切とはどういう事なのか。
それがどのような意味を持っていたのか。

けれど今は違う。
その意味が分かる。そう想える人がいる。
が一度胸に手を当てると、ウィンディーネを見て笑う。


「私が大切だと想うのは、ハートの海賊団。そして、キャプテンです」


その答えに頷いて笑ったウィンディーネは、隣に立つサラマンダーにそっと手を寄せる。
不機嫌そうなサラマンダーだったが、詰めていた息を吐き出してを見やった。


『そなたの覚悟、しかと受け取った』
「大火蓮…」
『我ら大蓮帥、そなたの罪を赦し、そなたの側にある事を誓う』
「……」
『お前、』

スッと向けられたサラマンダーの視線に、ミトがびくっと震えた。
その様子を特に気に留めなかったサラマンダーは一言「去れ」と言う。


『ここは我が責任を持って封じの劫火で焼き尽くす』
『そして、わたくしが癒しの水を持って新たな命を吹き込みます』

揃った二大紳を見上げたミトは、脱力して銃を落とした。
呆然と歩き出したミトがの目の前で足を止めると、スッと何かを差し出す。
受け取ったそれは、ラピスラズリの宝石が埋め込まれたペンダントだ。


「ミト…」
「もう、争いが起こらぬように」
「………分かった」

最後まで顔を上げなかったミトだったが。
ラピスラズリに落ちていた雫をなぞり、去っていく背中を見送る。
きっと、苦しかったのだ。
も、そしてミトも。
ペンダントを首に掛けたはニ大神の前に立った。






 Monopolize






『他の人間は外に。そなたは、我とここに』
「うん」
『そこの御方、外に出られた方が、宜しいですよ?』

振り返れば、そこにはローが立っており、扉の外には他クルーの姿も見える。
がローの元に戻って目の前に立つと、見下ろしてくるその目を見上げて笑った。


「私の、帰る場所であってくれるんですよね」
「……あァ」
「大丈夫です。私を信じて下さい」

ローの手を取って、は祈る様に両手で包むと目を閉じた。
その様子を見ていたローはただ静かにの手を握り返す。


「待ってて、下さい」
「……お前ら!先に行け!!」

ローの言葉を聞いたクルー達は、とりあえず言われるがまま神殿の側を離れて行く。
もローの手を離そうとしたが、離さなかったローがその手を引き寄せての耳元に唇を寄せた。
何かを告げると、引き寄せた体を離して神殿を出て行く。



「は、反則ですよ、キャプテン…」

(さっきの言葉、忘れるなよ、



思わず耳元を押さえたは、去っていくローの背中を恨めしそうに見つめた。





タイトルは「独占」にしましたが、自分のものだと認識した後の所有欲は半端なさそう。
という私の願望が入っています。
あと数話でこのシリーズも完結です。

2010/06/17