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放課後、いつもなら何も考えずに「ああ部活いかねーと」なんて思うのに。 今のオレにはまったくやる気と言うものが見いだせなかった。 面倒くさいと思ったことはあったけど、サボろうと思ったことは不思議とない。 諦めちゃえば楽なのにね、なんて誰かが言ってたっけ。 それでもオレはのそのそと部活に向かう準備をして鞄に荷物を適当に詰め込む。 あー、国語の課題持って帰らなきゃ。面倒くさい。 不意に、視界に教室を出て行くさんの背中が見えた。 そう言えば今日は委員会があるから放課後の練習には顔は出せないって言ってたっけ。 足早に去っていくその背中に、今日一日のことを思い出す。 隣の席でもないし、同じ班でもないし、実習でも彼女と一緒になることは一度もない。 注意して見ていないと、と言う存在は掻き消えそうなほどに小さかった。 言葉を変えれば、それほどまでに彼女とのクラスメイトとしての関わりがないと言う事で。 授業中。眠たくなっていつものように机に倒れ込む。 腕を下敷きに何となく彼女を見れば、彼女は凄く真面目に授業を聞いていて。 あ、消しゴム落とした。 今度は欠伸したし。凄く眠そう。 …窓の外を見てる。ため息を吐いた。何かを気にしてるような横顔。 オレが怒鳴ったこととか、気にしてんのかな。 そんな観察をしていて、ふとオレの口元が和らいでいたことに自分で驚いた。 そう言えば、こうやって彼女を見るのは初めての事で、最近、彼女を目にすることが多くなったような気がする。 部活が一緒だし、関わりが増えたのだからそれは当たり前のことであるはずなのに。 そういう理屈ではなく、自然と目が追いかける。小さいものなんて、視界からほぼ消えるから気にした事なんてなかったのに。 ―― ちゃんと原因と向き合うべきだ ―― 今朝の室ちんの言葉が、声が、頭に響いた。 向き合うって何のことだし。 オレは空想家じゃないから、妄言を述べたりなんてしたことないのに。 事実しか口にしてないのに。だから、逃げたことだって。 ―― だから、アツシは敵を作りやすいんだよ ―― それはバスケの時のことだろうか。 もしそうなら、自分たちとやり合う相手は敵だ。 敵を敵だと認識して何が悪いんだし。 ―― けど、そんなアツシに分け隔てなく接してくれた人がいるだろう? ―― 誰のことを言っているんだろう。 自分のこと?それともチームのこと? それとも帝光の時のこと? 分け隔てなくって何。 最初から敵意むき出しで話しかけてくる人間なんて、よっぽどの馬鹿くらいだと思う。 喧嘩売りに来てるようなもんじゃん。 だったら、それ以外の人は皆分け隔てなく接してるんじゃないの。 そもそもにオレが朝怒った原因はさんだし。 だって彼女を見てるとイライラする。 今朝だって別に何ともないって言ってるのに無理やり診ようとするし。 部室でだって危機感がなさすぎてその認識の甘さにイライラする。 昨日だって、その前だって、彼女は。 そこまで考えてオレはゴン、と机に頭を落とした。 別に、彼女が悪い訳じゃない。 今朝のやつは、マネージャーとしては当然の判断だったし。 部室で鍵を掛けずに着替えてたのは不注意だったけど、いつもはちゃんと鍵を掛けてた。 昨日の試合の時だって、彼女の行いは間違ってない。だから劉ちんの足だって大事に至らなかったんだし。 だったらオレのこの違和感は何だし。 無性に苛立って仕方ない。 もし原因があるとするならば、その時に必ず絡んでいる彼女で。 だからオレの怒りの矛先は間違ってないし、思ったことを口にしただけなのに。 なのに。 顔も見たくない、と思わないのは何故なんだろう。 彼女を見ているとイライラするしムカムカするしもやもやするし。 だったらいっそのこと、話しかけないでって言えば楽なはずなのに。 それを考えると胸が苦しくなる。 まるで誰かがオレの心臓を握り締めてるみたいに。 結局室ちんの言う"原因"なんてちっとも分からなかった。 それどころか頭が混乱して熱が出そうだった。 気分を紛らわそうとまいう棒を食べるけど味がしない。 破いた袋を見れば「コーンポタージュ味」と書いてある。 お菓子を食べてもおいしくないなんて、初めてだった。 |
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【あとがき】 彼女の席からむっくんが見えるのなら、むっくんの席からも彼女が見えるってことなのでそれを書きたかったです。 一応本人的には整理をして原因究明に努めているつもりなんですけど方向性が相変わらず(苦笑) [2013/11/15] |