インターハイ前に体を慣れさせる、と言う意味でオレたちは県内にあるそこそこ強いと言われている高校と練習試合をすることになった。
そこそこ、なんて言うけど、正直全然そんなことないし。
整列した時にスタメン五人で並んだら、向こうは委縮して小さくなった。
なんか、弱そう。これならオレが力を出すこともなくヒネリつぶせそうだし。

第1Q、第2Qと順調に得点を重ねてきたが、相手のチャージングで劉ちんが倒された。
意地になってファウルとかアホらしい。それって負け戦をするやつがやることだし。
その後すぐハーフタイムに突入したが、どうやら劉ちんが今ので足を攣ったらしい。
捻ったとかだと面倒だけど、攣っただけならまだ出られる。
それでも若干足を引きずってベンチに戻った劉ちんは、すぐさまマネージャーであるさんを呼んだ。
呼ばれていった彼女を視界に入れながらも、手渡しで貰えなかったタオルとドリンクを勝手に出して使う。

暫く横目に二人を見ていれば、どうやらさんに手当を依頼したのか、彼女は劉ちんの腕を引っ張って裏に座らせていた。
手早くバッシュを脱がせると、さんが劉ちんの足に触りながら感触を確かめている。

「私のお腹に足を当ててもらっていいですか?」
「えっ」

今度は足を抱え上げるようにすると、劉ちんに更に体を近づけて足を自分のお腹へ押し当てるよう言う。
流石の劉ちんも驚きを隠せない様子で戸惑うが、それを気にした風もなくテキパキとマッサージを進めるさん。
何と言うか。

「(むぼーびすぎるし)」

マッサージだって分かってる。手当だって分かってる。
それなのに、何だか変な気分。
今までだって怪我とかしても他の誰かがやってたことで。
確かにマネージャーである彼女はそう言った選手の体調管理も仕事のうちだけど。

彼女の処置が良かったせいか、雅子ちんがさんを褒めて、福ちんが何故か彼女を可愛いと言いながら撫でる。
嬉しそうに笑うさん。
自然と囲まれる彼女は多分、褒められたことに嬉しくなって、撫でられたことに恥ずかしさでも感じているのだろう。

何かがオレの中で音を立てて軋んでる。
うるさい。やめてよ。何なんだし。

ふと、手当てを終えた彼女と目が合った。
一瞬強張る彼女の表情。
ああオレ、多分今。

顔を見られたくなくて肩に掛かっていたタオルを頭に乗せて乱暴に拭いた。
視界から彼女が消えて、全てが消えて、外の世界と遮断されていく。
それでも音がはっきりと耳に届いている。
何者も寄せ付けない、何者も踏み込めない領域。
そうだ。オレはいつだってそうやって闘ってきた。

一人でだって、やれる。

ギリ、と奥歯を噛みしめる音と、何かが軋む音が重なった。
ああなんだ。さっきの音はこれだったんだ。
口角が持ち上がる。

第3Qからの記憶は、あまりない。
気付けば点差はトリプルスコアでうちがリード。
当たり前だけど。
対する相手チームは点を全然入れられない。
それもそうだろう。オレがそれを許してねーし。

滴り落ちる汗をユニフォームを持ち上げて拭う。
と、不意にベンチにいたさんと目が合った。
時間にすればほんの数秒。だけど、いつもよりその時間の感覚は遅いような気がした。
何でオレを見てるんだし。あの目、あの顔、あの声。全部ざわざわする。
オレを乱していく。
もう目が合わないように大袈裟に顔ごと反らした。
今オレが見るべきはコッチだ。

彼女じゃ、ない。


【あとがき】
あーあ、反抗期(笑)
試合以前にも、今までの部活でのこととか、今の劉さんのこととか。そういうことも含めて。
それが試合に集中する時の感覚のくせで、周りを遮断すると気持ちが安定すると言うか。
そうやって自分を落ち着けたら、何だ今までの気持ちの乱れざわめきなんて何も感じないじゃないか。と、言う状態です。
所謂排除して切り捨ててしまえば、楽ってやつですね。

[2013/11/13]