片思いなんて、いつまでも苦しくて切なくてバカみたい。
一言「好き」と言ってしまえば、良くも悪くもそのもやもやとした感情からは解き放たれるのに。
そう分かっていても言葉に出来ない自分が。一番バカだ。

「よう、おはようさん!」
「った!痛い!っていうかあんた朝から元気すぎ」
「おーそら悪かったわ、堪忍な」

ちっとも悪びれた様子もなくカラカラと笑うこいつは、忍足謙也。
私の幼馴染だ。私の事を女とも思ってないこの態度、凄くむかつく。

「あ、せや。数学の宿題やったか?俺昨日部活の後そのまま寝てしもて。ノート貸してや」
「やだ」
「って即答かいな!何でや、頼むっ」
「白石君に頼めばー?お友達でしょ?」
「その前に宿題忘れたことに怒られるわ」

他愛のない会話。分け隔てない空気。
謙也のこういう雰囲気が、私は好きだったりする。
そう、私はこの忍足謙也が好きだ。もういつから好きか分からない。
何せずっと隣にいる幼馴染だからだ。
けれど私はこの男に未だ告白できずにいる。
理由は簡単。今のこの関係が壊れてしまうのが恐いのと。もう一つ。

「…? 謙也?」

ふと、隣を歩いていた謙也が追いついてこなくなり私も足を止めた。
すると数歩後ろで足を止めて何かを見ている謙也がいる。
その視線を追いかけて、私の胸はちくりと痛んだ。
謙也が見ていたのは隣のクラスの女の子。
学園一の美人って訳じゃないけど、ほんわかした可愛い雰囲気を持つ子だ。
以前ユウジから「そういや知っとるか?アイツ、あの子の事好きやねんて」と指差されてから、
私も彼女を自然と目で追っている時がある。
謙也の、片思いの相手だ。

「………謙也、」
「お、おおお、すまん。ちょっとぼーっとしてしもた。
なんや今日も暑いなあ。まさに残暑やな。もう少し涼しくなってくれたほうが部活もやりやす」
「好きなら、告白したら?」
「…へ?」

彼女を見ていた視線をこちらに戻した謙也は、ぽかんとした表情のまま動きを止めた。

「好きな人、いるんでしょ?ユウジから聞いた」
「な、なっ、あいつ…!」
「卒業までもうすぐだし、もやもやしてるよりはすっきりするんじゃない?」
「せや、けど…」
「彼女、今彼氏いないよ?」
「何で知って、」

謙也が見ている彼女がどんな人なのか、見ているうちに私まで彼女について詳しくなってしまった。

「あと良い事ひとつ教えてあげる」
「な、んや」
「あの子ね、時々テニスコートに行ってるの、知ってた?」
「……、」
「勿論白石君が目当てな訳じゃないよ?」
「お前、」
「ここまで言えば、いくらヘタレの謙也でも分かるっしょ」

胸がずきずきする。息がつまりそうだけど、ここで表情は崩せない。
私は出来る限りの笑顔を作って、さっきの仕返しとばかりに謙也の背中を叩いた。

「いつまでもうじうじしてんな!こういう時こそのスピードスターでしょ!」
「…お、おう。せやな!おおきに!!」

そう言って笑った謙也の表情は、今まで見てきたどの笑顔よりもカッコ良くて。



好きなくせに馬鹿みたい



それは私に向けた言葉か、あなたになのか


【あとがき】
ついったーで上げていたもの。
元々アップするつもりだったけど結局前のところではアップ出来なかった(苦笑)

[2011/9/7]